さこう

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのさこうのレビュー・感想・評価

5.0
アニメは完熟期に

鑑賞後打ちのめされて席から立てなかったのはいつぶりだろう。イノセンス以来だろうか。とにかくヤバすぎた。今のところこれ以上のアニメはないと断言する。

おれは今、いち観客でありながら大抵の映像作品に「予算不足」「技術不足」「納期」を感じ、配慮し、甘い点数つけてきた自分を恥じている。いち観客がそこまで配慮する必要などどこにもなかったのだ。

これこそ語り合う価値のある作品だ。とにかく制作側の意気込みがヤバい。観客の感受性や人間性を100%信用して作られていた。めまぐるしい展開もあえて作る中だるみ部分にも至るところに技が光っていた。後半にやってくる文学的な表現もあくまで伝わりやすいように気を配りながらも、本質的なところはいたって大人向けな作品だった。

たとえば絶賛記録更新中の最高なアニメ、ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーも大変素晴らし作品だが、やはり「これはアニメだ」という枠に従って視聴者の対象年齢を低く設定しているので大人の鑑賞者は「子供向けだもんな、内容はこんなもんでいいよねワクワクできるし」みたいなある種の配慮が働く。

いや、マリオに関してはそれで良いんですちゃんと書いておくと。マリオがいきなり「人は皆死ぬときは一人」とか言い出したら困るやろーしな_(┐「ε:)_

そんなわけで前作はアニメ一発目というのもあって物語の基本構造はボーイミーツガールだったところ、本作は遠慮なく大人を狙い撃ちだ。前作と違い7フェイシズ構造ではなく複雑化し、壁を乗り越える主人公という構図はもう一人の主人公に託しマンネリ化を避け、子供の隠し事に対し過度に踏み入ることを恐れる繊細な大人心も見事に表現し、全ての人間は迷子であると比喩する。もはやスパイバーマンを使った文学。

観客に求められることも大きいのでぜひ集中できるスクリーンでの鑑賞をおすすめする。

その他おれが思ったことは↓に

・前作には攻殻機動隊のオマージュがあったが本作はAKIRAのオマージュがある。赤いバイク出てきた時からすっげぇワクワクした。

・ええ!?続編あるの!?と思ったがむしろ生きる糧が増えて最高

・CM、キャッチコピーどちらにも使われている「運命なんてぶっ潰す!」という表現がダサすぎるし脚本ちゃんと読んだ人間が訳しているとは思えない。日本側が観客を信用していないのが伝わってくる。日本人向けにチューンしたら意味ないじゃん。翻訳家が観客を舐めてかかったら終わりじゃないか。そういう理由で字幕をお勧めしたい。ただ巡査が昇級したら一気に署長に上り詰めてしまうバグのような誤訳は字幕・吹き替えどちらにもあるのでこれに関しても変な取り決めがあるのだろうなぁと思う。いけんよ、本気で作られた作品には本気で向き合わないと。。。

んでは今回はこれにて
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