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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのらのレビュー・感想・評価

4.4
今年一番の衝撃。超優れた娯楽作品であると同時に、完全に140分間のポップアート、コラージュアートだった。まずアバンタイトルの時点でぶっ飛んでしまったのだけど、そのまま最後まで同じレベルの画面(絵)の精度を維持してくる驚異的な作品。アニメーションならではのアングルや演出もてんこ盛りで、普通に現時点でのアニメーション表現の頂点ではないかと思う。キャラクターも魅力的で心をくすぐられるし、音楽も最高。同じベクトルで本作を超えるものは(続編の『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』を除いて)もう出てこないと思う。

メインのストーリーラインは「自由意志と決定論」というもはや定番になったテーマをもとにシンプルに描いていて、そこに恋愛や親と子の関係、若者の悩みなどさまざまなサブプロットが絶妙な塩梅で絡んでくる。情報量は多いけれど、実はプロット面ではそこまでごちゃごちゃしていないところが、娯楽性の高さにつながっているのだと思う。制作過程で一人の圧倒的なカリスマがいるというわけではなく、1000人のアニメーターが主体的に参加しているところも健康的だし、この制作スタイル自体が作品の内容とも結びついているように感じる。

二回観たらスポットの魅力に完全にやられました。「ヒーローは良いけれどヴィランが全く魅力的ではない」ということがよく起こるヒーローものにおいて、これは相当強い。それから、ハイスピードなアクションシーンだけでなく、会話シーンのきめ細かさにも目を奪われた。キャラクターの微妙な表情の変化だったり、感情と背景が繊細に連動していたりして、とにかく美しい。
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