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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのbluebeanのレビュー・感想・評価

4.0
アーティスティックなアニメーションの表現が前作以上に洗練されていて、最初から最後まで完璧におしゃれでかっこいい映像を楽しめました。3Dアニメを手書き風にアレンジしていますが、グウェンのいる水彩画風の世界から始まり、あらゆる画風の世界を見せてくれます。人の手で書き込んだすごさというよりも、画像処理の技術を突き詰めて作り上げた、テクノロジーのすごさを感じられる映像でした。そう聞くと手書きのオーラみたいなものが失われそうな気がしますが、あまりにクオリティが高すぎて偽物感ゼロです。

わざとコマ数を減らしてコマ撮り感を出したり、水彩絵の具が滲んでいく表現とか、レンズの色収差みたいな背景の滲みとか、こだわり満載です。最近日本のアニメは主題歌でアートっぽいアニメーションを入れてくるのが流行ってますが、本作はここぞというシーンだけではなく、普通の会話シーンも含めて最初から最後までそれが続く感じです。あまりに映像の情報量が多くて、若干観るのが疲れるというのが正直なところでした。

前半はキャラたちのポップで軽いノリに多少疲れましたが、後半いっきに静かでシリアスになって見やすくなりました。秘密を言えずに親とうまく行かないとか、社会の要求と自分の感情の葛藤とか、まさに青春ビルディングスロマンという感じで良かったです。

決まった展開に従って世界の構造を守るか、自分の感情に従ってそれをぶち壊すか。このテーマは、既存のヒーローのレイメイクを描くマーベルコミックの作家たちの心情を象徴しているのかもしれません。
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