ふくやま

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのふくやまのレビュー・感想・評価

4.6
今年の6月に1年間の交換留学から帰ってきたのだけど、今考えると帰国して最初の方は急に現実に引き戻されたり環境の変化だったりとかでかなり精神的に参っていた時期だった。たった1年間だけ日本を離れていただけなのに…あとまじで東京の夏は暑すぎる。
とにかく、そんな時にこの映画を見て気持ちが軽くなったからありがとうという気持ち。

【対立構造。運命を受け入れるか否か。】
基本的に映画における全てのスパイダーマンは「私情vs正義」の板挟みにいつもある。今作でも最終的に行き着いたのは「自分の家族vsマルチバースの秩序」だった。ここ最近MCUでマルチバースが扱われるたびに考えているけれど、バースの秩序のためという大義と目の前の正義感の対立が新たなテーマとして立ち上がる。ドクターストレンジでは、バースのために目の前の少女アメリカを見殺しにするしかない。しかしもちろん我々の道徳的な直感は目の前の命を見殺しにしてバースの秩序を守るわけにはいかない。ストレンジはどちらも救うという決断を取る。だから今作もスパイダーマンはどちらも救うという決断を取るのだろう。彼は自分とは違う世界のクモに噛まれたスパイダーマンであるという異質性を活かして。彼には運命に抗う特権があるはずだ。運命に抗うといえば、『DUNE』を思い出した。またシャラメはマイルズとは境遇が異なるが、、DUNEの続編楽しみ!

また、二項対立で言えば「大人vs子供」の構造が今作でも見られた。大人はミゲルオハラ。そもそもスパイダーマン自身が常に2つのアイデンティティ(学生とスーパーヒーロー)の間で揺れている。これは思春期の抱える普遍的な悩みにも通ずる気がする。


【グウェン】
間違いなく今作のもう1人の主人公はグウェン。親友のピーターパーカーを失った彼女の唯一の心の支えは父とマイルス。それなのに彼女は自分の半分であるスパイダーグウェンを父に見せることができないというジレンマを抱えていた。マイルスに関してはバースが異なるため会うことができない。そんな状況に置かれていた彼女が父親に銃口を向けられる。そうなったらもうこの世界に彼女を引き止めるものはない、さらにバース間の移動によってマイルスにまた会える、そんな思いから彼女はスパイダーソサエティに加入した。つまり、他のスパイダーマン達はおそらくミゲルオハラに正義のためだと召集されて加入したのに対し、彼女はそうではないのである。しかし、実際にスパイダーソサエティに入り彼女はマイルスの置かれた状況を知ってしまう。あまりにも辛い境遇。彼女が1番の板挟みにあっているし、孤独である。
あと、グウェンとパンクの関係はなんなんだ!

【その他】
・マイルズと両親の親子ドラマには涙してしまった。
・こんなこと今さら言わなくても…という感じかもしれないけど、映像と音楽が良すぎる!!映像に関してはもうわけがわからない!!アメリカのアニメーション映画史上最長作品らしいが全く長いと感じなかった。そしてMetro Boominは最高🐐である。
・可能世界(パラレルワールド、マルチバース)を扱う作品にはいつもロマンがあって惹かれる。あとちょうどこの時期、勉強で可能世界を扱っていたからテンションあがった。(トランスワールドアイデンティティという概念とか勉強してた!)
・どうやらこの世界は運命があらかじめ決まっているという設定らしい。もちろん次作でそれに抗うのだろうが。ジョジョを思い出した。
・この映画実は4つのバージョンがある。細かいシーンがちょっと違う。
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