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はりぼてのKUBOのレビュー・感想・評価

はりぼて(2020年製作の映画)
4.0
いや〜、おもしろかった!

久しぶりの試写会は『はりぼて』。

2016年、政務活動費の不正疑惑で、富山県市議が14人もドミノ辞職した事件を描くドキュメンタリーだが、テーマの持つイメージに反して、

おもしろいんだ! 映画としておもしろい。大いに笑った!

度々本編中にかかるテーマ曲がいい。編集のテンポの良さと相まって、なんか伊丹十三監督の作品を見ているような軽妙さ。

それにしても、出るわ出るわ、芋づる式とはこういうことだろうな。次から次から不正が発覚し、無実を主張した舌の根も乾かぬうちに謝罪会見からの辞任劇の繰り返し。

開いた口が塞がらないとは、このことだ。

その不正を追及したのが富山の「チューリップテレビ」という小さなローカル局の若いキャスターと政治部の記者のコンビ。

この2人、五百旗頭幸男と砂沢智史がこの映画の監督であるわけだが、この2人の真っ直ぐな情熱がスクリーンの中に息づき清々しい。

富山は保守王国と呼ばれてきたが、それは裏を返せば公金を着服する腐敗政治の温床でもあったわけだ。

だが見ていて、全てのシーンが中央政治と結びつく。政務活動費の不正受給で市議が着服していた額はせいぜい数万円〜数十万円、合計すれば一千万〜二千万にはなるが、それで辞職する。後援者を招いた酒席を公務活動報告会として、辞職する。

これって、モリカケ、サクラ、一億五千万、どれをとってもアウトでしょう! 公金を自分のために、支持者のために、私的に使う。額は違えど、腐った金権政治の本質は、地方も中央もいっしょ。だが安倍は辞めない。誰も安倍を追及しない。

安倍や菅にろくに追及もせず、用意した原稿の朗読会に甘んじている政治部の記者たちに、本作を見てもらいたい。長いものに巻かれ、忖度ばかりしている、息のできない記者たち、どうせ何をやっても政治は変わらないと諦観を気取っている人にも、見てもらいたい。

この作品は、「ジャーナリズムとは権力の監視者である」という根本的なことを我々に改めて教えてくれる。

上映後のリモートによる舞台挨拶で熱く語った五百旗頭監督の思いに、我が意を得たりと感動し、思わず拍手をした。

『i -新聞記者ドキュメント』『なぜ君は総理大臣になれないのか』の次はこれ! 絶対におもしろい! 政治部の記者はみんな見ろ! まだジャーナリズムは死んじゃいない。
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