未体験ゾーン延長戦ラストの作品。
今なお燻り続けるトルコとクルド人の戦い。
これは2015年に起きたディヤルバクルで起こった包囲戦を描く実話。
何千人というトルコ警察やトルコ軍に包囲されながら、100人に満たない若者達が籠城戦とゲリラ戦で徹底抗戦。
実際にこの戦いに参加した人が本人役で出演している。
しかも、なお散発的に戦闘が起こる地でロケを敢行したという。
それだけに戦闘シーンの生々しさや、彼らが如何に戦ったかという描写がリアル。
あの破壊された建物や瓦礫の山は本物ってことだもんね。
それまで銃すら手に取ったことがない若者達が、家や故郷を守るため、クルド人としての誇りを守るために戦闘に参加していく。
前半は包囲されるに至るまでの流れが淡々と続くのでちょっと眠くなる。
てか隣の隣のオッサンがっつり寝てたし😅
みんなで「戦いに行くぞ!オー!」とかじゃなくて、画面に「包囲戦開始1日目」と出て自然発生的に包囲戦が開始される。
それがまたリアル。
後半はもうほとんど戦闘シーン。
彼らの凄まじい戦いの記録が目に焼き付いている。
一応、語り部として弟が殉死し、自らも戦いに身を投じたジランという女性が主人公らしく描かれてはいる。
でもこれは戦った一人一人が主人公ともいえる。
とはいえ、やはり作戦のメインとなるリーダー格の人達がいて。
その中でも女性スナイパーのヌジャンがめちゃくちゃカッコ良い。
一発必中で敵を殺しては移動、殺しては移動を繰り返し、その姿は神出鬼没。
それでも数十人で何千人もの戦闘のプロと戦うのには限界があって…。
弾薬も尽きかけてきた頃、彼らはある決断をくだす。
これがまた切なくも、クルド人達には勇気と希望を与えたのではないだろうか。
日本ではほとんど報道もされなかった戦闘。
それがこうやって映画となり、世界に発信されているという意義。
自分の故郷が蹂躙されて、果たして自分だったらこのように戦えるだろうか?
すぐにDVDがリリースされがちな未体験ゾーン作品だけど、これは劇場で観て良かった。
映画としては拙い部分も多いけど、この包囲戦で戦った人々に敬意を評して高得点。
【補足】
ちなみにクルド人は少数民族とは言われているけど、世界中に3000万人以上いるらしい。
第一次世界大戦後、4つの国に分断されたクルド人達は、それぞれ独立を目指し戦い続けている。
ニュースとかで「クルド人自治区」などと言われているのがそれ。
シリアでISと実際に戦っているのもクルド人達が多いという。
最近では「バハールの涙」でISと戦っているクルド人女性兵士が描かれていた。
同じくシリアのアレッポで包囲された人々を描くドキュメンタリー「娘は戦場で産まれた」や、自国で起きている現実をネットで配信し続けるジャーナリスト達を描いたドキュメンタリー「ラッカは静かに殺されている」など、中東のリアルを世界に届けようとする作品が増えている。
この映画も、その系譜の1つ。
これは日本だけでなく、世界の多くの人々が観るべき映画だと思う。