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彼と彼女の第2章のaiaiのレビュー・感想・評価

彼と彼女の第2章(1995年製作の映画)
4.0
(--ii--) 結婚は人生の墓場ではなく、彼と彼女のPiece of cake(楽勝) な物語なのだ。

ビリー・クリスタル演じるミッキーの恋人役、そして妻となるエレン役の女優“デブラ・ウィンガー”
若い頃は「愛と青春の旅だち」(1982)でアカデミー主演女優賞をノミネートされるなど、ひと頃ハリウッドのトップクラスに位置した女優。

その彼女は、本作(1995)の主演を最後になぜか映画界からぷっつりと消息を断つ。

そして、7年近くほど経って、あの「デブラ・ウィンガーを探して」という、自身の名がタイトルになった、ハリウッド女優らの赤裸々な告白ドキュメンタリーが生まれることになる。

名作「愛と青春の旅だち」(1982)もみたし、本作(1995)もテイストが好きなので何度かみているし、「デブラ・ウィンガーを探して」(2002)もみたことある。

だが、恥ずかしながら、ここでレビューを書く今の今まで、自分のなかでそれらの作品のデブラがリンクしていなかった。

いやぁ、申し訳なかったデブラさんって感じですm(_ _)m

彼女の女優として、一人の女として、どういう人生だったか想像もできないが、本作の主演が何かしら、彼女を吹っ切らせたきっかけとなっているようにも思えてくる(何かしら彼女のスイッチが入ったきっかけ)。。。想像の域を出ないけど。

本作は、デブラにとって、ある意味「デブラ・ウィンガーを探して」の序章的作品だったのか?

***恋愛未成年者にはつまらない?

本作を単純なラブコメ・ロマコメ作品のたぐいとして評する向きが内外でもあるようだが、それって、あまりに恋愛未成年者ですよね~(笑m(_ _)m)と言いたくもなるほど、本作は大人の男と女による、仕事感、恋愛感、結婚感の違いをそれぞれの立場からしっかりと描いていることに気づけていない。

アメリカの恋愛市場(?)は成熟しているから、比較的年配者の恋愛ものが多い。
年配者は言いたいことがストレート過ぎると、時として摩擦を生じるからと気を使い、何かしらジョークでまぶす傾向がある(笑)。

また、そもそもスタンダップコメディアン出身のビリー・クリスタルが監督・脚本・主演なのだからして、コメディ色が無いわけがない。

だけど、ビリーがこの作品で言いたかったことは、彼と彼女の第二章ではなく(邦題がお洒落すぎて逆に伝わらないが)原題どおり、FORGET PAIRS(パリを忘れて)

ようするに、ひねっていて”初心忘るべからず”と。

ミッキーとエレンの出逢いはパリ、その時の気持ちは一緒にいてただただ楽しかっただけ。

結婚し、仕事の悩み、生活の悩み、子作りの悩み、介護の悩み、そりゃその歳で生きてりゃいろいろあるさ。

でも、2人でいることだけで楽しかったパリを忘れちゃいかんよと。
ラストはミッキーもエレンもそれを忘れていたことを思い出す。

***結構凝った作り

ミッキーとエレンの友人らがレストランのテーブルを囲み、2人のなれ初めから始まり、さまざまな2人に起きた出来事を口述していく。

そして最後の最後に満を持してミッキーとエレンの当事者2人がレストランに登場。
ミッキーとエレンの山あり谷ありの物語を聞いていた友人の新しい彼女にしてみれば、2人の登場に、ああ、ミッキーとエレンだ、サインして!みたいな感じになる。

最後のレストランに登場する前に、バスケットボールのコートで、ミッキーとエレンが再会する際、エレンの「私達幸せになれるの?」という問いに対し、ミッキーは、
「piece of cake(楽勝)さ」
と答える。

”piece of cake(楽勝)”という言葉は、ミッキーにとっては不吉な言葉で、調子が良い状態でこの言葉を使うと、マーフィーの法則じゃないけど、辞世の句になってしまうことがあるからと、なるべく避けてきた言葉。
それはエレンも知っている。
その言葉をあえて、あの2人の再会シーンで使うセンスは、非常にユーモアがある。
それまで、わからない、わからないと曖昧で優柔不断な態度をエレンにとってきたミッキーだからこそ、”piece of cake(楽勝)”と言い放つ勇気がすごく活きてくる。

さすが、筋金入りのスタンダップコメディアンが考えることは一味違う。

***本当の意味での第二章はやってくるのか?

ビリー・クリスタルはまだまだ現役みたいですが、デブラ・ウィンガーは実質引退でしょうか。

二人とも高齢ですが、ラストワンマイルはぜひ共演し、本当の意味での彼と彼女の第二章を見せてくれたら嬉しいなあ・・・と思うこの頃。

ーー蛇足ーー
これは推測の域をまったく出ないが、本作が日本でDVD化されていない不思議な理由としては、シーンのなかで、

・日本の怪獣映画を揶揄するセリフがある

・日本の有名な自動車メーカ名を連呼している

このあたりが、映画製作サイドの上層の誰かの怒りをかっていたり、どこかのクライアントの忖度(宣伝になってしまうとかね)があったりしてるんじゃなかろうかなぁと・・・
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