河

Albertine ou Les souvenirs parfumés de Marie-Rose(原題)の河のレビュー・感想・評価

4.2
https://www.cinematheque.fr/henri/film/124010-albertine-jacques-kebadian-1972/

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ヴェイユ法

> 1972年、友人に強姦され妊娠した当時16歳の女子学生マリー=クレールが非合法の中絶を受けたとして母親、医師らとともに起訴された事件(ボビニー裁判)があり

フランスで中絶が合法化されるのは1975年で、ベースになっているのはこの事件のように思う。タイトルもここからきているのでは。

妊娠した少女がいて、教会による子供たちの祝福、子供たちを守らなければいけないという読み上げと並行に、そのお腹は顔の見えない他者に踏まれたポンプによって膨らまされていく。カトリックでは中絶が禁止されている。

中絶合法化のための呼びかけに対して、快楽を得たのだから対価を払うべきという声がかけられる。妊娠した子供は学校を辞めさせられ、仕事を得ることも禁止されたまま牢獄のように家に閉じ込められる。そして、それを避けるために中絶すれば犯罪となる。育てようとすれば貧困へと陥っていく。

老人や困っている大人に道を譲りましょうという、倫理観を押し付けてくる大人による授業、それが子供による授業にすり替わる。自慰が自身の身体を知ることに繋がること、そして快楽が退屈な授業による空虚を埋めることが伝えられる。快楽を得ることがその押し付けられた規則、倫理観に対する反抗手段、自衛手段のようにおかれ、親の前で汚くケーキを食べることと重ねられる。

そして、授業終わりのベルと共に子供たちが教室で暴れ出し、その暴動は五月革命へと重ねられていく。

子供とその周囲の社会を往復しながら子供の妊娠、中絶についての状況を簡潔に伝えつつ、音、映像の繋ぎ合わせ方によって子供に向けられた正しさの皮を被った暴力、それに対する反抗の可能性を描くことで中絶合法化に向けたアジテーション・告発にもなっているように思う。

映像的にはジガ・ヴェルトフ集団と非常に似ている。同じような作品の中でも背景にある問題との接合含めて完成度の非常に高い映画だと思う。
河