湯っ子

トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そしての湯っ子のレビュー・感想・評価

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若い頃に何も感じずに観ていた映画を今になって再鑑賞すると、感覚の違いにギョッとすることがある。このドキュメンタリーの中でも、情報が大切だという言葉が印象に残る。ハリウッド映画の中で、いつも特殊な存在として描かれてきたトランスジェンダーの人たちがこんな描かれ方をしているのは胸が痛むし、現実ではそれよりずっとひどいこともあるらしい。それでもメディアを通して闘うトランスジェンダーの人たちの姿に心を打たれるし、とても勇敢だと思う。
悲しいことだけど、私はやっぱり差別というのはなくならないと思っている。しかし、それでも声を上げ続けていかなくてはならないとも思う。
「白人であることは特権を持っていることを自覚するべき」ということは、私はアメリカのショウビズ界隈から耳にした。「マジョリティの可視化」「特権を持っていることを自覚する」ということについて、私も考えた。
私は今のところ自分の国籍や性指向で差別される環境にはないし、職業柄、性別で差別される環境にもない。この日本で暮らす限り、私はマジョリティであるといえるし、特権を持っていることらしい。それは「ゲタをはかされてる」とか「単に運が良くて、私の持っているものは実力だけで手に入れたものじゃない」っていうことを自覚しないといけないってことだ。
だけど、私が万が一外国に住むことになれば、英語も話せないアジア人の中年女性。何重にもなるマイノリティで、特権なんてどこにもないだろう。そう考えると、本作のトランスジェンダーの人たちの痛みが身近になる気がする。私にできることは想像することと知ること。差別については、これからも真剣に考えていかなくてはいけないテーマだと思う気持ちを強くした。
湯っ子

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