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トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そしてのyotaのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

Netflixオリジナル作品『Disclosure』を観た。息を呑む1時間47分。
トランスジェンダーが、ハリウッドでどのような扱いを受けてきたかを当事者たちが分析、語っていくドキュメンタリー作品。

LGBTQという言葉がありますが、自分はその中の一部に属しており、且つ海外のドラマや映画を多少観ている人間だから、無意識下にトランスジェンダーの人たちについて「理解」がある気がしていました。
その傲慢さを恥じずにいられない内容。
「性自認と性的指向は全く別の話」と指摘されていて、当たり前のことながら申し訳なくなった。
ちゃんとインプットして勉強しないと、どんどん視野が狭く主観的になり、考える時主語がデカくなる愚かな人間なんだ自分は。

サイレント映画初期90年代初頭からトランスジェンダーを笑いのネタにしていた、という導入に始まり、時代を下りながらハリウッド作品やTVショーでの作品の問題点が指摘されていく。
そこには私の大好きな映画『羊たちの沈黙』も。そういえば、バッファロー・ビルは…。
この名作が「トランスジェンダーはサイコパスであり、病んだシリアルキラーである」という悍しいイメージを社会に流布した事実が当事者の口から語られ、絶句。
自分が全て視えているなんて思ってはいないけど、これまでまったく見えなかった差別の輪郭を捉えた時はいつもショックを受ける。

そして、トランスジェンダーのフィクションでの役はセックスワーカーが多いという件。
現実にセックスワーカーは多いが、それは社会の雇用差別のためであり、その背景を無視して表面的な事だけしか描かれないという問題点が指摘されていた。

リアリティ・ショーで司会からゲスに問われる「手術に関する事」、「性生活」。
そしてフィクションで作られた「お笑いとしてのトランス表現」。
「だから人として見られない」
この言葉の重さに息が苦しくなった。

そして来ると思った『ボーイズ・ドント・クライ』。
この映画は色々とショッキングで、シスジェンダーの自分ですら思い出すのも辛いんですが、当事者たちの心痛たるや。
しかも本作、元の事件では黒人のトランスの友人が共に殺されていたが、映画ではその存在が抹消されたらしい。初めて知ったなそれ。
こういったトランスジェンダー界隈でも存在するホワイトウォッシングについての批判もあったし、またシス男性俳優がトランスジェンダー役を演じてオスカーを獲るという数十年にわたって続いている搾取についても批判されていた。

一体今まで自分は何を見ていたのか。
本当に何にも見えてなかったんだな…。
眼から鱗の着眼点の連続。
シスジェンダーとして、トランスジェンダーの知人のいない人生であるとこんなにもこの事について知らないんだな…。

もっとも印象的だったのは、「暴露」について。
物語の中で、トランスジェンダーの「元々の性別」は「暴露(Disclosure)」されるべきであり、それによって彼ら/彼女らは何らかの罰を受ける。
そのように作られたイメージを連続してテレビや映画で観て育った事に対する、当事者たちの苦痛。

まだまだ消化しきれてない部分も多いけど、とにかく観て良かった。
すげえ作品でした。熱量…。
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