すいかずら

十二単衣を着た悪魔のすいかずらのレビュー・感想・評価

十二単衣を着た悪魔(2020年製作の映画)
3.8
とても楽しみにしていただけに、複雑な気持ちで観ることになり残念。
と思ったけど、予想以上に三吉彩花の弘徽殿女御がカッコいいのと、また伊藤沙莉の倫子が愛らしいのとで何度も泣かされそうに。

「源氏物語」を敵役の視点から描いた本作。敵役=弘徽殿女御の敵役=光源氏が、いわゆる女性に優しい色男ではなく、(出来がいいと評判の割に)ただのワガママな女好きに描かれ、あれ?となる。あぁ、弘徽殿側から見ればそうなるのね。
でもそれじゃあ「源氏物語」とはいえないのでは?と思うけど、元々話を知らない雷にはどちらでもいいことなのかも。だからこそ、新鮮に見たまま聴いたままを語り、弘徽殿女御の信頼を得たのだろう。

虚構の世界に入り込んだ雷が長い年月を過ごす設定に、全然展開が読めなかったけど、倫子との愛情溢れる暮らしは観ている方も幸せになったし、その喪失には本当に泣けた。
現世では出来のいい弟の存在に少々ひねて斜に構えてた雷が、人と向き合い、愛や信用を得たことで生まれ変わる話なのね。

伊藤健太郎の雷/雷鳴、最初はチャラくて今あれこれ言われてるようなことが思い出されてちょっとブルーに。けど、倫子と出会い、この世界で生き始めてからは、腰の座った話し方になり、平安の装束も着こなして、「観たかった」健太郎になった。
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