こんなみ

13月の女の子のこんなみのネタバレレビュー・内容・結末

13月の女の子(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

アイドル系美少女がたくさん出てくるちょっと切ない青春物かな〜と軽い気持ち見始めると、思いの外重くて難解でびっくりします。

特にパラレルワールドの仕組みを考えれば考えるほど、なかなかきっちり辻褄が合わなくて頭が混乱しそうになりました。笑

ただ、そういうのを抜きに一穂と巫女の友情を超えた愛の物語だと捉えると物語が入ってきて、なるほど尊い...!と感じられました。

一穂と巫女は二人とも孤独な女の子だけど、巫女は孤独を受け入れていて、一穂は実は孤独を恐れている、という印象を受けました。

学校でも家でも、自分から壁を作ってだれとも仲間になろうとしない一穂。
それは巫女が言う、「誰といても人間はどうしようもなく孤独」という事実を実感しないように自分を守っているのだと思います。
だからこそ、唯一の心の拠り所である巫女がその言葉を言った時、一穂は強く否定する。

巫女の死後、この二人は浮間莉音の体で別の世界のお互いに会いに行くのですが、そのリアクションの差に二人の関係性が出ているのが面白いなと思いました。

一穂は断固巫女を信じないのに対し、巫女は最初は疑うもののすぐに一穂を受け入れる。
現実の二人の関係でも、一帆は巫女がいないと生きられないという感じでしたが、巫女は一穂が生きてさえいればそれでいい、といういわば無償の愛みたいなものを一穂に持っていたと思います。

物語の途中、現実の一帆とパラレルの一帆(莉音)が対面する空想?の場面、あれは現実の一帆がだんだんと巫女の死を受け入れて、それでも巫女を本当の意味で愛することに気付いてきた成長の場面なのかなと思います。

そしてラスト、パラレルワールドでも病魔に襲われた巫女に、「想いの強さが行き先を決める、元気な自分の姿を思い出して。」と伝える。

現実でもパラレルでも死ぬ運命の巫女に、"元気な姿"はない。
つまり一穂は、もうどこにも元の姿形の巫女はいなくなってしまうことを受け入れた。
それでも魂だけは生き続けてね、もう現実で会えなくてもいいから、という意味なのかなと。

そしてラストの場面。
桜の木の下で再会したのは、巫女ではなく莉音。
だけど一穂はそれを笑顔で受け入れる。
それはもう会えなくても、一緒になれなくてもいいから、あなたの存在だけでもう十分だという無償の愛を一穂が手に入れたことの象徴で、だからこそ二人は本当の意味で再会できたのだろうと自分は解釈しました。


小宮有紗さんは綺麗なお姉さん役が似合うイメージでしたが、根暗で影のある女の子も意外と似合っていました。何より肩から上のヌードのシーンは彼女にしか出せない女神的なエロスを感じました。
秋本帆華ちゃんの包容力ある巫女役も素晴らしかったです。
常に笑顔でおっとりしゃべるあの雰囲気、弱々しいけど芯の強い巫女にぴったりでした。屋上の場面はこんなに演技の出来る子だったんだと驚きました。

そして萩原みのりさん、私はこの映画ではじめて彼女を知ったのですが、圧倒的演技力..!
彼女がこの作品の軸だと思いました。
一穂と巫女の入れ物という役割の莉音をあまりにも自然にこなしていました。彼女なしではここまで感情移入できなかったと思います。
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