カルト映画の帝王ジョン・ウォーターズ監督が愛する50年代のアメリカ・ボルチモアを舞台に、不良グループのリーダーで革ジャンとダックテイルをクールにキメたクライ・ベイビー (デップ) と山の手のお嬢様アリソン (ロケイン) の恋をミュージカルを交えて描いた青春物語。
『アメリカン・グラフィティ』のようなノスタルジックや『ラ★バンバ』のようなエモーショナルが一切ない本作は、一見単純おバカ映画に観られがちだが、実はそうでもなく、ウォーターズ自身が肌で感じた50年代のロックンロールや映画『理由なき反抗』『監獄ロック』『女はそれを我慢できない』へのオマージュが随所に散りばめられた名作といえる。
また“アメリカ・50年代・ロカビリー”をこよなく愛する筆者にとって、全編を彩る音楽はどれも最高で、中でも本作のために書き下ろされたバディ・ホリーを彷彿とさせるヒーカップ唱法が冴え渡る♪King Cry Baby は何度聴いても(観ても)カッコいい。
なお、翌年にはロカビリー歌手を夢見る青年を描いたブラッド・ピット主演による『ジョニー・スエード』が公開されているので、本作を機に “若き日のジョニデ&ブラピ” のロカビリースタイルに酔いしれるのもよいだろう。
138/138 2021