サトタカ

アウトポストのサトタカのレビュー・感想・評価

アウトポスト(2020年製作の映画)
4.2
2009年10月3日。アフガニスタン東部、パキスタンとの国境付近に位置する米軍の前哨基地(アウトポスト)キーティングが、早朝にタリバーンの戦闘員に襲撃を受ける。基地は周囲を山に囲まれ、タリバーンから攻撃されやすい最悪な立地。撤退を想定していたこともあり守備は脆弱。取り囲む高地から米兵の6倍に相当する300人以上のタリバーンから一斉に攻撃される。機関銃を手に基地内にわらわらと侵入してくるタリバーンたち。四面楚歌の状況下で14時間の攻防を描く一本。

イケメン、オーランド・ブルームの扱いや射殺される犬(米国映画で犬を殺すのは御法度とされる)など、監督の気合いを感じる。
圧倒的に兵士の数に違いがあったのだが、米兵は死者は(言っちゃ悪いけどたったの)8名、いっぽうタリバーンは150名以上の死者を出したらしい。
タリバーンは兵士の練度が低く、統率された動きができなかったのが大きいように見えた。
また、時間が経てば米軍には航空支援(空爆)がくることはわかっていたのに、基地から離れたところにいたのも痛かった。防御の薄い方角から大量に侵入して、米兵と混戦状態にしておければ…。

米兵たちが「もし銃で脅されて、基地の誰かとファックしなければならないとしたら誰とやる?」という軽口を交わすシーンがあるが、完全な男社会(ホモフォビア)の環境ではこういうのがおもしろいんだろうね。唯一の女優は最後に出てくる女性カウンセラーなのだが、イスラム原理主義者達の女性差別とあいまって、「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」に対する批評的なメッセージを感じた。

当然ながらすべてが米国、米軍視点なので、アフガニスタンの人々は金にうるさかったり、嘘をついたり、虫けらのように殺されたり扱いがひどい。しょうがないんだろうけどね。もうちょっとバランス取ってほしかった気がしないでもない。

しかし、ダイレクトにセリフなどで言いたいことを伝えるのではなく、ある意味たんたんと基地での日常シーンと戦闘シーンを繰り返し描写することで、逆に伝わってくるものがあった。ハードボイルドで、好みな一本。
実話だからアレだけど、指揮官が死んだりしてコロコロ変わって、それに振り回される下っ端兵士達の描写も不条理で楽しい。
臆病な指揮官がプラのカップにした大量の尿を捨てる仕事はしたくないなぁ〜(笑)。

ちなみに2021年8月、バイデン政権により米軍はアフガニスタンから完全撤退。日本は在アフガニスタン大使館を閉鎖。タリバーンは首都カーブルを実効支配し、タリバーン暫定政権発足している。
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