あなたのやさしさを何に例えよう

ボーイズ・ステイトのあなたのやさしさを何に例えようのレビュー・感想・評価

ボーイズ・ステイト(2020年製作の映画)
4.0
「意見の基になるのは経験だ。保守派の考え方も学ばないとね。それが義務だと思う。相手を知ることも大切だ」

「演説は政治的なもので僕の本心じゃない。
僕はゲームだと思ってる。当然勝ちたい」
「僕たちの大半は保守派に偏ってる。どっぷり保守派だ。中絶に対する僕の意見は彼らとは違うから 意見を変えたんだ。それが政治なんだと思う。勝てば知事になれる。そのために必要なことを話すんだ。大声では言えないけど中絶に反対じゃない。心のままに言葉を発したら勝てないと気づいた。自分の意見が少数派だったら 民主主義の世界では勝てないんだ。政治にはびこるウソは道徳的に問題だ。どんな理由があろうとウソはだめだ。だから僕もウソをやめる。正直な政治家がいいと思ってたけど ここへ来てなぜ政治家が選挙でウソをつくのか分かった」

「みんなはバカ騒ぎしたいんだと思ってた。
だからそう振る舞った。でも違ったみたいだ。
実はみんな心の底では本気になりたかったんだ」

まず連邦党と国民党に振り分けられる。
その後各党は指名候補を選出し、綱領を作成して選挙に挑み、最高位職となる知事を決める。

まずは党内部で、党委員長を決めるための争い、氏名候補者を決めるための争い、綱領を作成する際の内部対立がある。
そしてさらに相手の政党との戦いがある。
これらの争いに次ぐ争いのなかでも、ダークサイドに堕ちずに理性的でいられるか。その難しさを感じる作品だった。
意見が違う相手とも理性的に話し合って合意を目指すスティーブン。相手を中傷して対立を煽る連邦党。多分後者の方がずっと簡単で楽なやり方だし、勝ちやすいのも後者だ。『ボーイズ・ステイト』のなかでも連邦党が勝った。
「政治家としては最高だ」という言葉が褒め言葉なのかは疑問だという声が出る。

負けたあと母と電話で話すスティーブン
「負けたから泣いてるわけじゃないんだ。
仲間が次々にやってきてハグするんだ。それで”誇りに思う”って。」
彼が成し遂げたことは素晴らしいが、選挙では勝たなくては意味がないのだ。

このシステムは果たして本質的なのだろうか?
『なぜ君は総理大臣になれないのか』で小川淳也が「何事も51対49で決まっている。政治っていうのは、勝った51がどれだけ残りの49を背負うかなんです」と言っていたのを思い出した。

24.02.06
自宅