ヨーク

ウィリーズ・ワンダーランドのヨークのレビュー・感想・評価

4.3
まず最高だったと言わせてくれ。いや言わせてくれなくても言うけど、マジ最高だったよ。
いやー、でもどうすっかな。どんな感想文書こうかなって思ったんだけど、ぶっちゃけ大満足で超面白かった映画を観たときって「面白かった」以外に言うことないんだよな。特に本作なんて別に取り立てて何が凄いっていう映画でもないし、時事問題に絡むようなタイムリーなテーマがあったわけでもなく、映像表現の最先端というようなとんでもない映像が繰り広げられるわけでもなくぶっちゃけよくあるB級映画なのだが、でも面白いもんは面白んだから仕方ないよな。
お話もすげぇ単純でニコラス・ケイジが廃墟になった遊園地で何故か殺人鬼の魂が乗り移ったマスコットキャラの電動ロボと死闘を繰り広げるホラー・アクションです。これ以上の説明いる? いらないよね? 別にストーリーは語るところないから、この映画。あ、でも上記のあらすじに少し補足をすると「死闘」というのは正確ではないかもな。そもそもニコケイは殺人マスコットロボと戦うつもりなど毛頭なくて、車の修理の費用を現金でしか受け付けないと言われたのでキャッシュを持ち歩いていないニコケイは仕方なく廃墟遊園地の清掃をすることを修理代の代わりとして引き受けたのですよ。だからニコケイの目的は廃墟遊園地を綺麗に清掃すること。殺人マスコットロボと戦うのは彼らがニコケイの仕事を邪魔してくるから仕方なく対応しているだけなんですね。
だから本作のほとんどはバトルというよりも仕事の邪魔する奴を処理するという淡々とした作業になるわけだ。そしてあくまでも労働なのでニコケイは必ず、絶対に、断固たる意志で休憩を取る。1時間に1回か2時間に1回かは分からんが多分10~15分くらいの小休憩を絶っっっ対に取るんですよ。まぁ当然労働者の権利だし、雇用主にも「ちゃんと休憩は取れよ!」って言われたしね。エナジードリンクかビールかそれともルートビア的なものかは分からないが休憩の度に必ず1缶を飲み干して休憩室にあるピンボールで労働によって疲れた体と心を慰める。そして仕事の時間が来ると淡々と仕事をこなし、仕事を邪魔する奴は始末する。殺人マスコットロボをニコケイ・フェイタリティで仕留めるとお約束のように血の代わりの油が噴出するのだが制服代わりの遊園地のスタッフTシャツが汚れたらその都度ちゃんと着替えたりもする。なんて実直な仕事人なのだろうか…。
でもそれもそのはずでニコラス・ケイジという役者自体がそういう役者なのだ。映画好きにとってはニコケイが主演している=B級映画くらいの認識になっている者も少なくはないだろうが、しかしそれは裏を返せばニコケイは映画の内容がどんなものであれ、それを引き受けたなら仕事として全うする役者だということでもあるのではなかろうか。つまり本作はそんなニコケイという役者の役者人生そのものを称える賛歌のような映画でもあると言えるだろう。
もう途中からはホラー要素なんて微塵もなくなりニコケイ・オン・ステージになってピンボールで遊びながらノリノリで踊っちゃったりするんだけどその辺の多幸感とか凄いからね。中盤くらいからずっと笑ってたもん、俺。あと本作のニコケイは基本セリフ無しでサイレントな演技なんだけど大好物(多分)な飲み物を飲んだときの「くぅぅ~~ッ!」っていう声と殺人マスコットロボを叩きのめすときの「フンッ! フンッ! オリャ!」っていう掛け声が最高すぎてもう最高としか言えない。
いやもう本当に面白いだけの映画だから他に感想書くこともないんだけどとりあえずB級映画が好きな人とニコラス・ケイジが好きな人は必見と言っていいんじゃないかなとは思いますね。まぁその両者はかなりダブってそうだけど…。
ちなみに本作は現状では新宿のミニシアター1館でしか上映していなくてとても勿体ないと思いますね。しかもイベント上映的なものなので毎日やってるわけでもないし。めっちゃ面白いからめっちゃ観ろよな! としか言えないんだけど、もう少しだけでも上映館増えればなぁと思います。
あと一応最後に書いておくがこの映画めっちゃしょうもないからな。めっちゃしょうもないけどめっちゃ面白いからな。映画に限ったことじゃないけどそういうことってたまにあるよね。クソ下らねぇけど最高に面白いの。『ウィリーズ・ワンダーランド』はそういう映画です。
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