mimitakoyaki

アジアの天使のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

アジアの天使(2021年製作の映画)
3.7
日韓どん詰まり家族のロードムービー。

テーマはすごく良いなと思うんです。
互いに嫌い合う険悪な国同士の関係があっても、人と人とは分かり合える。
言葉や国籍やいろんな違いを超えてつながり合える。
そういうのは好きなんですが、状況や人物の設定が、何だかモヤるんです。

疎遠になった兄を頼って、日本の何もかもを捨てて韓国に来るほど、疎遠の兄を信じられるものなのか。
子どもが行く日本人学校の資料や入学の手続きや、そんなん必要やろ。
兄のビジネスが順調な裏付けとか、何もかもナシのまま、息子と身一つで韓国へ⁇
そんな馬鹿なことあるかいな!
とはじめから不安を感じてしまいました。
とにかく、池松、アンタ大丈夫か?しっかりせい!と、そんなもん騙されるアンタの落ち度やんか、と思ってしまうばかりでした。

相手が日本語を全く分からないのに、ひたすら日本語だけを話し続ける態度にも疑問だったし、池松の父親役にあまり共感できなかったところが、ちょっと残念でした。

でも、チェヒソのそれはもう痛々しい先行きの見えなさ、どん詰まり感は良かったし、キムミンジェさんが出てきてからの旅のシーンは良くて、妹への思いとか、怪しげな日本人ともナンヤカンヤで一緒にいてくれた人情味とか、優しさが哀愁も帯びてて、良い役者さんだと再認識しました。

かなり現実は厳しくて、旅が終われば、1ミリも解決してない辛い現実が待ってて、これからどうやって生きてくのかな、と心配になりますが、こうして思いがけない出会いから、何だかちょっと特別な存在になってく感じや、豊かになれなくても、それなりに家族や周りの人が大切で、それでどこか心強かったり、幸せだと思えられたら良いのになと思いました。

日本も韓国も、厳しい学齢社会、競争社会で、生きづらいところがあって、そういう厳しさの中でもがきながらも、人と人との繋がりの中で、自分自身や相手を受容し、互いの存在が支えになって、ほのかな希望になるというようなのが良かったです。

そして、日本と韓国とが一緒に映画作品を作れるってこと自体がとても素敵なことで、数年前までの嫌韓ムードから見るとだいぶ変わってきてるのが嬉しいです。

17
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