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The Sorcerers(原題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

The Sorcerers(原題)(1967年製作の映画)
3.9
優しそうなお婆様の大暴走!

超好き!若者の頭脳にアクセス→操る→犯罪をさせる…それをVRゲームの如く自分の部屋でウッキウキで楽しむお婆様の突き抜けた狂気を拝める婆怖い系ホラー。窃盗→傷害→殺人と、お婆様のスリルへの欲望は止まることを知らず…あのボリスカーロフもドン引きしてた😂

多分グラセフをVRにしたら感覚的にはこんな感じなんでしょうね。現実→現実にダイブしてるからVRではないんだけど笑笑

催眠術の専門家のボリスカーロフが、「どこにも行けない高齢者にも色んな体験をしてもらいたい!」と高尚な動機のもと、他人の思考にアクセスして操る…だけでなく感覚器官まで同期させる装置の開発に成功。操作されてるやつの痛みや快感とか全部自分のことのように感じられるので、水を触ったら冷たいし卵割ったら痛い…そして怪我したら自分も怪我をする。

さあ!実用化するぞ!と意気込むカーロフだったけど、奥様のエステルが「今まで私たちはインチキ扱いされてきたのよ!ちょっとくらい良い思いしたいわ」とカーロフを説得。街で見かけた高級マフラーをゲットするためにイケメンにアクセスし操作→夜中にお店に忍び込ませ、警官の目を掻い潜り窃盗成功!→このスリルが病みつきになり…という流れ。「お前は“本物のスピード”を体験したことはあるか?」とか言ってイケメンにバイクで暴走させるとことか笑った🤣

系統的には『カリガリ博士』の本案になるのかな。あちらのドイツ帝制や徴兵制とは程遠いながらも、どこかに行きたくても行けない高齢者と、どこへでも行けるのにどこに行けば良いか分からず彷徨っている若者の交差を象徴的に描きつつ、ドイツ帝制等に代わって対象とする構造を飛躍し過ぎたところに移行させてから茶化している。

理性が非理性を倒す展開についてもよりわかりやすく踏襲しており、それは善悪のペルソナ的に描かれる。本来倒すべきものが作中には出てこず、構造自体は誰の目にも止まらずに外形事象のみが消費されていく…という後の『バスケットケース』的な虚しさが良かった。自分は「ハンバーガー」である自覚とそれを裏返すという不可逆性も好き。
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