逃げるし恥だし役立たず

ディル・ベチャーラの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

ディル・ベチャーラ(2020年製作の映画)
3.5
「きっと、星のせいじゃない。」のインド版リメイクと聞けば避けて通るのが賢明。まず人種的に共感できない、青春恋愛譚とつきあうには歳をとりすぎたという理由。だが見事に裏切られる、心を撃ち抜かれる秀作。
ヒンディー語で「ディル」は「心」、「ベチャーラ」は「かわいそうな、哀れな」という意味。前半は天邪鬼な主人公キジー(サンジュナー・サーンギー)とおバカな彼氏マニー(スシャント・シン・ラージプート)との出会いと青春譚で進行、後半は残された時間を一気にラストまで観せていく。彼氏のおバカ加減が良い。そもそも若者は無計画で無鉄砲なのだ。その彼氏に天邪鬼な主人公が時間をかけて惹かれていく。
個人的に鑑賞後には悲壮感ではなく爽快感と清涼感が残る。彼らの余命は短いが濃密な人生を過ごしたからに他ならない。闘病患者だって普通に青春がある、悲哀を押しつけた自分の傲慢さを反省。本作はインド映画だが違和感なく鑑賞。インド映画でもリメイクでも青春恋愛譚でも避けてはいけない。私たちの生命は永遠ではない、残された時間でいかに多くの出会いや経験をしないといけないのだから。