たま

僕と頭の中の落書きたちのたまのレビュー・感想・評価

僕と頭の中の落書きたち(2020年製作の映画)
4.0
統合失調症という病。

幻覚や幻聴が現れる様を、分かりやすく可視化してくれている。
ちょっとした視線、微かな雑音、心のどよめきによって、現れる幻の人たち。怒り、緊張、ときめきなどシチュエーションによって現れる人間も様々。
極度の緊張時には、爆音が鳴り響き大勢の荒くれた人間が騒ぎ出す。
こんな病なのか…と。

治療法が確立していない事と偏見により、癌より厄介だと主人公は言う。

一方、芸術家にも多い病。
草間彌生は子供の頃から幻覚幻聴に悩まされたという。
今でもそれと戦いながら作品を命懸けで制作している。
画家のムンク、ファッショデザイナーのアレキサンダーマックイーンもそうだったと聞いた。

主人公の高校生アダムは、類まれな料理の才能を持っている。調理学校に通い、シェフになり店を持つのが夢だ。
病のせいで学校で問題を起こし、転校を余儀なくされる。
何とか卒業にこぎつけて、調理学校に進学したい。
その夢を後押しする母親や女友達の同級生マヤ。阻むのは病だ。

薬は万能薬じゃない。
薬だから必ず副作用があるものだけど、体の異変や味覚の異変には耐えられない。
薬を飲んで欲しいと願う母親とのやり取りが辛い。

アダムとマヤはしだいに惹かれあっていくけど、マヤは家庭の貧困をアダムは病を隠していた。
母の新しい夫、ポールへの不信感も拭えなかった。

他人との人間関係を築いていくのは誰でも簡単じゃない。アダムにとってはもっと難しい。
自分を愛してくれる人を信じて、頼ることも必要なのかと思う。

完治が望めないなら、上手く付き合っていくしかない。
アダムの成功を応援したくなる、そんなラストだった。
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