カレス

僕と頭の中の落書きたちのカレスのレビュー・感想・評価

僕と頭の中の落書きたち(2020年製作の映画)
3.7
IMDb 7.2
吹替/字幕
統合失調症/恋愛

   

アダム! アダム!! アダム!!! の地響き声が恐ろしい。



統合失調症の人を知っていた。奥さんも同じ病気で二人は結婚したが、奥さんは自殺してしまったそうだ。
部屋で具合が悪くて動けなくなって救急車を自分で呼んで入院した。ご近所さんだったので、何もできなかったが、救急隊員と話したりした。退院してから「息子と住むことにした」とぼくに言った。隣に住んでいた人に聞いたが、調子の悪い時は「今、宇宙と通信しているから黙ってて」とか言っていたそうだ。自分もちょっと話したことはあるが、几帳面な感じであまり笑わない人だった。

「オザークへようこそ」ではウェンディ・バード(主人公の妻)の弟が双極性障害で、副作用を嫌い薬を飲まずにハイテンションになってしまい、壮絶な運命を辿った。彼を愛していたルース・ラングモア(ジュリア・ガーナー)を私は推していたのでたいへん辛かった。

映画やドラマでは重症例ばかり目立つが、実際は軽症の人も多いだろうし、治療がうまくいって社会復帰した人や近々社会復帰する人も多いと思う。精神疾患については誤解が多そうだ。しかし、北杜夫(芥川賞作家、エッセイスト、精神科医、医学博士)は自分の躁うつ病をエッセイのネタにしていたが、つらい時は本当につらいそうだ。(ご存じだと思いますが、北杜夫の父は斎藤茂吉で、兄は精神科医でエッセイストの斎藤茂太。北杜夫の娘、斎藤由香は上場会社に勤めエッセイも書いた。で私はつい先日この人の本を買った。おもしろそう)

アダムの悩みはきちんと解決するのだろうか。
統合失調症の主人公の映画としては「ビューティフル・マインド」が実話をもとにしているし、名作でおススメです。しかし、私が「僕と頭の中の落書きたち」を見ることにしたのは「ロスト・イン・スペース」で活躍したマヤ役のテイラー・ラッセルと、「テラビシアにかける橋」のアナソフィア・ロブが見たかったから(+0.2)







ネタバレですけど、このシーンとかこのセリフが良かった↓





① 入院して、ベッドに拘束されているアダム
マヤが突然見舞いに来て「アダム、違う、本当のあなたじゃない」と言う。
幻影のアナソフィア・ロブ:「よく聞いて。マヤなら全部受け入れてくれる」
マヤはとっとと離れて行くだろうと考えたけど、昔の経験から「好きな人と離れることは世界を失うことだ」と思い出した。

② アダムのセリフ
「僕は病気をずっと抱えているけど、僕自身が病気そのものじゃない」

③ 義理の父から校長への手紙
「治療の過程を報告してきたのは義務だからではありません。アダムの人生に関わる大人が情報を共有することがアダムに取ってベストだからです。退学させると脅すのは横暴です。断じて受け入れられません。今、私の息子に必要なのは恐怖にかられた心の狭い大人から守ってやることです。学園の理念である倫理観と品性の高さに基づいて、どうか公正な決断を下して頂きたい」
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