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黒い罠 完全修復版のHKのレビュー・感想・評価

黒い罠 完全修復版(1958年製作の映画)
3.9
オーソン・ウェルズ当時43歳の監督作品。
1950年代のメキシコ国境地帯が舞台のノワール。
CS録画をほとんど前情報なしで観ましたがけっこうクセはあるもののオモシロイ作品でした。

本作は撮影後にユニバーサルが勝手に手を加えたためウェルズが激怒した作品らしく、今回観たのは当時のウェルズのメモを基に40年後に修復された1998年のバージョン。

ストーリーはさほど面白いとも思いませんが、その猥雑な場面のひとつひとつがいかにも映画的というか、モノクロの光と影も巧妙で引き込まれました。

チャールトン・ヘストンはなんとメキシコ人(に見える?)の麻薬捜査官役。
その美人のアメリカ人の奥さん役は『サイコ』のジャネット・リー。
オーソン・ウェルズも重要な役で出ていますが、めちゃ太った老刑事役で『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランド並みの盛りメイク。おかげで出てきてすぐは誰だかわかりませんでした。
そして出番は少ないけど酒場の女主人マレーネ・ディートリッヒからは紛れもないオーラが・・・

で、ジャネット・リーが他に客のいない怪しげなモーテルに一人で泊まるんですが、そこの管理人がまるでノーマン・ベイツのようなヒョロっとした言動のアブナイ奴。
このシチュエーションで『サイコ』を想像するなと言う方がムリなんですが、『サイコ』は本作より2年も後。
しかもこのノーマン・ベイツもどき、なんと若き日のデニス・ウィーバー(『激突!』『スレッジ』)でした。
直前にたまたま『スレッジ』を観てD・ウィーバーが本作にも出てると知ってたからわかったものの、知らなけりゃ絶対気づいていません(若いし変態だし・・・さすがアクターズスタジオ出身)。
映画を観る順番にも不思議な運命を感じます(大袈裟?)。

冒頭、車に爆弾が仕掛けられてからのエキストラ多数の大掛かりなハラハラ長回しはホントお見事。
そしてアップテンポでジャジーな劇伴がイイ感じと思っていたらエンドクレジットで音楽はヘンリー・マンシーニと判明。
う~ん、なかなか不思議な魅力のある映画でした。
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