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黒い罠 完全修復版のandesのレビュー・感想・評価

黒い罠 完全修復版(1958年製作の映画)
3.9
冒頭の伝説的な長回しに触れない訳にはいかないが、その他も随所にショットが決まりまくっている。モノクロならではの陰影や不意をつくドリーショット、外連味あるジャンプスケア的なカットもある。
前半は登場人物が次々出てくるので少し混乱する。意図的だろうし、巧妙な映像効果もあり、物語以上に濃密に感じてしまう。ストーリーは意外と単純なのに観ていて妙に疲れるのは、カットを決め過ぎているためかもしれい。
反面、クインランの過去がボヤッとしていたり、ギャングの目的や怖さがイマイチよくわからなかったり、意外とポンコツ(杖忘れる、すぐ自供する)など、弱い部分もあると思う。まぁ、それを、映像でカバーするのは流石。
終盤の盗聴器のシークエンスは撮影の効果もあり非常にスリリング。結局、クインランの「勘」は正しく皮肉で苦いラストとなる。謎の女が闇に消えていく、というのは真に映像的だ。
名作というより、映像技法がたくさん詰まった怪作。あと、オーソン・ウェルズの役作りはやり過ぎ(笑)。俳優陣の好演も作品のクオリティを押し上げている。映画とは「物語」だけではない「総合芸術」もしくは「総合娯楽」である。
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