なつこ

名も無い日のなつこのレビュー・感想・評価

名も無い日(2020年製作の映画)
4.0
「命日はいつになるんだ」

観終わってから30分くらい、ジワジワと涙が出てきて困った。
これが監督の実体験から来てるなんて、その現実に愕然とする。
今も日本のどこかで、人知れず息を引き取っている誰かがいるかもしれない。

DNA鑑定をしないと本人と分からない、死因も分からない…そんなになるまで…
周りからのアクセスも全て拒否し続けた章人。自殺だったとしても、そうじゃないとしても、彼に生きる気力が無かったことは、なんとなく予想できる。
ただ、どうしてそんなことになってしまったのか…生き残った人々は、永遠に答えの出ないその問いを抱えて生きていかなければならない。

廃墟のような部屋の中で、食卓に箸だけが揃っている。
彼の食事するシーンは、見てるだけで苦しかった。カメラは敢えて表情が見えないアングルで撮っていたのが印象的。
そう、誰も見ていないのだから、映画といえど再現はできない。

孤独死というのは、ひとり孤独に死ぬ事なのか、それとも孤独によって死を迎え入れる事なのか。
メモの言葉が、頭に焼き付いて離れない。
(ネタバレなのでコメント欄で)

次男章人の訃報を聞いてアメリカから帰国した長男の達也。三男の隆史は明るく振舞っているが、章人の状況を信じたくない。
達也もまた、深く後悔し、思い出す出来事があった。

同級生の息子とばったり会った達也は「ニューヨーク行ってみたい」という少年の言葉に、「いつでも来たらいい」と答える。
それが章人の言葉に被って、聞いてるだけで苦しい。いつでも来たらいいと、章人にも言っていたら…。

また、恋人の死によって、心の時間が止まってしまった同級生とも再会する。彼女を見て、達也はなにを思ったのだろうか。

これはもっと多くの人に観てもらうべき作品だし、観た後に身近な人と話して欲しいと思う。
こんな豪華キャストなんだから、もっと宣伝すればいいのに!と思ったけど、内容が内容なだけに、バンバン宣伝はしづらいのかな…。
クチコミで広がってもっと上映館増えますように!!!
なつこ

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