マルケス

ボヤンシー 眼差しの向こうにのマルケスのレビュー・感想・評価

4.0
タイトルの「buoyancy(浮力)」という単語を初めて知った。自力で浮かび上がらなければ死んでしまう。力尽きた船員が海へ沈んでいくシーンもあり、内容を的確に表すタイトルだった。

劣悪な漁船で奴隷労働を強いられる14才のチャクラ。智恵を働かせて何とか生き抜いていたが脱出するには…。
奴隷労働者の方が数が多く、協力すれば船主を縛り上げて逃亡できるのに、彼らには連帯感など欠片もない。仲間意識も持てないほど、人間性を失ってしまうのだろうか。

ようやく故郷に戻ったチャクラだが、家族を遠目に見ただけで歩き去る。帰れないのだと思い至った。酷い世界を知りすぎて、無邪気だった頃のように、もうここでは暮らせないのだ。
歩き出したチャクラの歩む人生を考えてしまった。
マルケス

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