KnightsofOdessa

Lost Girls and Love Hotels(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

2.5
[フィフティ・シェイズ・オブ・アースクエイクバード]

Catherine Hanrahan の同名小説を映画化した作品。彼女は東京で英語教師として働いていた経験があり、同小説はその経験を基に書かれている。日本にやって来た白人女性が日本人の男に恋をして云々という物語は『アースクエイクバード』に似ているが、内容的には『ミスター・グッドバーを探して』や『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』シリーズに近いものがある。客室乗務員候補生に英語を教えている主人公マーガレットの勤務態度は真面目とは言い難い。夜中まで同じような境遇の知り合いたち(白人)と共に延々と管を巻いた後、行きずりの男とともにラブホテルへなだれ込んで夜を明かし、毎朝酒の抜けきらない寝ぼけ眼で職場に現れる彼女は、想像通り遅刻常習犯だ。しかし、彼女の上司は自分の過去を彼女の中に見出しており、関係性は元通りになったり更に良くなったりすることはあっても、悪くなることはあまりない。そんな自由気ままというか破滅的/刹那的な生き方をしているマーガレットはある男に出会う。

原作小説は語り部たるマーガレットの一人称で話が進み、その過程で彼女の生き方や考え方についてのヒントがあるのだが、本作品では刹那的な彼女の生活に対応してか映画そのものも刹那的になっているため、マーガレットの人物像はいまいち掴み難い。ヤクザのカズという男に出会った彼女は、そのマゾ的な欲求を叶えてくれる彼に依存し始めるのだが、その背景となる物語がチラチラ見え隠れするのも歯切れが悪い。主人公の行動の全てを見渡そうとして焦点を見失った窮屈な映画になっている感じは否めない。そして、いわゆる日本っぽい閉鎖的な空気感というのが前提にあるはずで、規範を守らずに遅刻ばっかりしてるマーガレットと(それが仕事とはいえ)全員が同じ服を着て同じ行動をする生徒たちとの対比で閉鎖性の息苦しさみたいなのを対比させていたはずなのだが、それが表面的なものに終わっているのも残念。

孤独になりに来たと言いつつ、しっかりと異国で疎外感を感じる外国人がバーで管巻いてる感じはすごい良かったのだが、結局ヤクザからのスカイツリー→富士山→京都というロイヤルストレートフラッシュを決められて撃沈してしまった。監督の手腕がなくて観光映画っぽくしているのか、日本のアピールポイントがそれくらいしかないのか、それとも日本側の売り込みがそこなのか(日本で撮る条件的な?)は知らんが、そろそろそういうのに頼らない日本描写が欲しいところ。そう考えると日本には行かないものの"ハラジュク"をユートピアと捉えていた『HARAJUKU』は日本を描いた作品としては異質だったのかもしれない。

個人的にはマーガレットと共に酒のんでグダグダした生活をしてるカリス・ファン・ハウテンにもうちょっと登場してほしかった。彼女は退場することで"親友がいなくなる"という経験をマーガレットに付与するだけなので全然出番がないのが惜しまれる。
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