■ 概要
劇団・ヨーロッパ企画の俳優、石田剛太が監督。
劇団主催の短編映画祭「ショートショートムービーフェスティバル」の、2015年大会に向けて制作された作品。
■ ストーリー
夜、男はひとり、バーで飲んでいた。
彼女とケンカをしたばかりだった。
その隣には綺麗な女が座っていた。
女は男にビーフシチューを食べに来ないかと誘惑してくるが…。
■ 感想
実験映画かな??
上映時間全体の90%近く、画面内に幽霊と言うか生霊が映っている。
流石にこれは出しすぎだ・・・。
ホラー映画として全く機能していないし、コメディーとしても機能してない。
鷲巣義明著『恐怖の映画術』にて、「呪怨」シリーズの清水崇監督が
清水崇監督「幽霊を見せすぎて尚且つ怖がらせてやろう!!」
と強い覚悟で臨んでいること、そして、それを実現するテクニックなどが書かれており、個人的には見事に成功させたと思っている。
本作の制作陣にそれらの覚悟があったのかは分からないが、少なくとも腕がない事は確かだ・・・。
生霊を見せすぎが、完全に裏目に出てしまっている。
◎ ホラー演出
初めて生霊が出現した瞬間、ホラーが苦手な人には恐怖を感じるかもしれないが、それ以降は全く怖く感じないはずだ。
何故なら、本作では生霊がずっと「同じ姿」、「同じ表情」にて画面内に映っているからだ。
「呪怨」の伽椰子を怖いと思う人も、3分近く同じ姿を見てれば余程のトラウマがない限り、恐怖は薄れてくるはずだ・・・。
しかも、本作の生霊は伽椰子のように悍ましい姿をしていない。
「ひきこさん」や「クネクネ」と同レベルの微塵も怖くないビジュアルだ。
これでどう怖がれと・・・。
また本作では、
・生霊が男の肩をつかむ
・銀のスプーンに生霊が映る。
といったホラー演出を盛り込んでいるが、これが全く効果を発揮していない。
これらの演出は、普段の日常生活の中で唐突にやるから効果がある訳で、画面内にずっと映っている生霊がそれをやっても何の効果もない。
あと、生霊のショットもおかしい。
画面内にずっと映るにしても、画面の端とかにひっそりと映ってるなら、まだホラー演出として効果があるのかもしれない。
だが、本作では生霊を何故かバストショット(頭から胸までのショット)並みの近距離で捉えることが多い。
これによって、ただでさえ微塵も怖くなく生霊っぽくないビジュアルなのに、余計に生霊っぽさがなくなってしまう。
多分、これをみた大半の人は、生霊ではなくてただメイクに失敗した人にしか見えないのではないだろうか・・・。
それとさ・・・これは有り得ないほど致命的なミスだと思うんだけど・・・。
本作では主人公の彼女が生霊として出てくるのだが、劇中にて主人公が彼女にスマホで電話するシーンがあるのだが、スマホの着信時に映っている彼女の顔がどう考えてもおかしい・・・。
なんと、スマホの着信時に映っている彼女の顔が、生霊と全く同じ顔なのだ。
え??
何、どういうこと??
この彼女は日常生活で幽霊っぽいメイクしてるってこと??
いや、まあ・・・別にどんなメイクしても好みがあるからいいけどさ・・・。
普通さ、彼女から着信が来たら、その彼女の一番の笑顔とかそういう写真を設定するんじゃないの??
なんでこの男は、この生気のない不愛想な死人のような顔を着信時の設定にしてるんだ??
他にマシな写真ねーのかよ!!!
◎ シナリオ
何で男が浮気する前から、彼女の生霊がいるんだ??
例えば、男が何度も愛人の所に行く「失楽園」や「夜明けの街で」のような話だったら理解出来るけどさ・・・。
別にそういう訳じゃなさそうだし・・・。