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ライジング・フェニックス パラリンピックと人間の可能性のBlueMoonのレビュー・感想・評価

4.8
実は僕、パラリンピック関係の財団で働いている。パラスポーツの持つ魅力や価値は、十分に理解しているつもりだった。
よく言われている言葉で「パラリンピックには世界を変える力がある」というのがある。自分でも信じてきた言葉だし、実際に自分でパラアスリートの姿を観てきて同じ思いを抱いてきたけれど、この言葉の意味を自分は本当には知らなかったんだと、このドキュメンタリーをみて思い知らされた。
パラリンピックそのものが、もっと力強く、世界を、この惑星を、人生を変える大きなうねり、ムーブメントなんだ。

両手両足を失いつつも、驚くほどの天真爛漫さとフェンシングへの愛と共に、一気に金メダルを勝ち取った少女。内戦で目の前で母を殺され、自身も足を失った義足のジャンパー。常識なんて気にせず、足を使って弓を構えるアーチャー。一人ひとりが持つストーリーと、アスリートとしての力、スポーツとしての眼を見張るような強さと美しさに目が釘付けになる。
そして、そんなアスリートたちの姿を通して、世界を変えようとしてきたパラリンピック大会の歩み。開催できなくなるという不安を乗り越え、世界により良い価値をもたらすために、戦い続けてきた人々。
驚くほどの熱量・興奮と共に、パラリンピックの真の姿を超然と提示してくるこのドキュメンタリーが、東京2020大会が延期された現在こうして世に出たことの意味はとても大きい。

アスリートも、大会も、これまで幾度となく困難を乗り越えてきた。このムーブメントは止まらない。止めてはいけない。
フェニックスは死なないのだ。

これはパラリンピックの決意表明だ。
1年後の未来を、世界と共にたぐり寄せるんだ。
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