ぴんゆか

ヘイターのぴんゆかのレビュー・感想・評価

ヘイター(2020年製作の映画)
3.9
ネットフリックス公開のポーランド映画。偶然見つけて一切期待せずに見た結果、想像以上に見応えがあり、テーマも興味深かった。
特に序盤では運こそなけれど主人公がごくごく普通の人間で、そのままうまくいけば平凡に良い人生を送れたことが示唆されていたように思われる。演じる俳優さんもすごく目立つでもない、高身長というわけでもない、欧州のどこにでもいそう。良く言えば素朴そうな、悪く言えばつまらなそうな、平凡な青年感が出ていたのが醍醐味。
それだけに、そのような人間が社会をひっくり返してしまうポテンシャルや野望を持つ事が妙にリアルで万人に当てはまってしまいそうな気がした。
また、他者からの肯定や否定に一喜一憂する人々につけこんだビジネスなど、SNSを通してより人の目を気にするようになってしまった人々の姿を非常によく表しており、またその過激性もまんざらフィクションではないように感じた。
Uberで食事を配達しにきた人が異国情緒ある顔つきで殴られたような血まみれの形相でやってきたりと、LGBTや外国人への風当たりが強く、関連する暴動がよく起こっているポーランドの実情も至る所で細かく描写されており、その点でもとても良くできているといえる。物語の構成、過激性が加速していく様子も自然でかつ小気味良い。
ただ何よりも、最初普通に見えた主人公の顔が話が進むにつれ、やつれて深いクマのある、失うものが何もない者の顔になっていくのが不気味でかつ象徴的。
ぴんゆか

ぴんゆか