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海辺の彼女たちのlpのレビュー・感想・評価

海辺の彼女たち(2020年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

ワールドフォーカス部門から『僕の帰る場所』の藤元明緒監督の新作!
2017年のアジアの未来部門を制した『僕の帰る場所』は、日本で暮らすミャンマー人の家族をテーマに、前半は日常描写のリアリティに驚かされ、後半は少年の成長譚にグイグイ惹き込まれる傑作だった。そんな傑作を撮った藤元監督の新作。上映されるスクリーンが小さいこともあって、チケットは早々に完売。
否が応でも高まる期待を胸に鑑賞したのだけれども、藤元監督は今回も凄かった!

技能実習生として来日した3人のベトナム人女性の物語。彼女たちが実習先から逃げ出し、青森の海辺の町にやって来るところから映画は始まる。
淡々と3人の女性たちの姿を映し、彼女たちの苦しさを観客へ静かに訴えかけてくるのだけれども、今回もそのリアリティは驚異的だ。
金銭面での苦しさや、故郷に帰りたくとも帰れない苦しさ、職場での存外な扱われ方などを、自然なショットの積み重ねで映す。特に彼女たちが周囲の人間と関わるシーンは、ドキュメンタリーを観ているような錯覚に陥るレベルだ。違和感が無く、すんなりと物語が現実の如く入ってくる。

映画を推進するストーリーは、ネタバレ回避で詳細は書かないけれど、非常にミニマルなもの。
しかしながら、主人公(3人のベトナム人女性の中の1人)の「心の揺らぎ」は捉えられていて、充実したものに感じられる。小さい話ながら、映像の力でしっかりと紡がれている。巧い。

やはり藤元監督は今後も要注目の存在だ。2021年に劇場公開も予定されているそうなので、気になる方はぜひ!
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