幽斎

パスワード:家の幽斎のレビュー・感想・評価

パスワード:家(2018年製作の映画)
4.4
C級スリラー(ホラー)をレビューする、Scavengerシリーズ第12界。今回は特別編としてフォロワーさんのミステリー鑑賞会に出題者と解答者としてレビュー。第1弾「レイクサイド・スクリーム」に続くチョッとした頭の体操第2弾、皆さんもご一緒に考えて下さい。AmazonPrimeVideoで0円鑑賞。

スペイン産ブレインウォッシュ・スリラーの傑作。Manolo Munguia監督のオリジナル脚本は、先ずスペイン語だけに、南米のファンタスティック映画祭で受賞を重ね、北米に上陸すると主要都市のコンペで高く評価され、結果的に13の賞を受賞。アメリカでは謎解きの特設サイトまで現れた。其処へ監督自らバルセロナから参戦、スリラー界隈で沸騰した作品だが日本では完全にスルー状態。

まぁ邦題が意味不明でジャケ写も地味なので、一見面白そうには見えない。一発逆転のスリラーにしては104分と長目、アマゾンの機械翻訳も誤訳が多くいい加減なので見る側が咀嚼する必要も有るが、コレが造作も無く日本で見れるだけでも有り難い。一体何人の人が観て、どれだけの人が結論に辿り着けただろう?。

キャストの設定はITに詳しい前提、テクノロジーやセキュリティの話が主で、ソレが大体40分位続くので、映画が面白い以前に、此処で脱落する方が居ても何の罪も無い。一般論では難しい話じゃ無いが、映画として誇張した点も無く、SE系の人が観ても違和感は無かろう。監督が自身でネタバレを教えてくれたが、アプリの逆コンパイルされたコードは、2017年にWindowsをハッキングした「WannaCry」マルウェア。

「話が見える」までの時間が長く、物語がどの方向に行くのか見定めるまでが退屈、と言う事は観方を変えれば、其処に重要な伏線が隠されてる訳で、リーダー格のラファが「世界中のハッカーが試みた機密ファイル」の解読に成功、複製したスマホの拡張現実アプリの件から怒涛の如く物語も動く。IT用語に疎い観客の為に、友人が一般人の設定なので、普通にスマホが使える程度の知識で全く問題ない。

「30秒後の未来が見える」、所謂AR Augmented Reality。既視感有るなと思って観てたら、Nicolas Cage主演「NEXT-ネクスト」。2分先の未来を知る能力を隠し、ラスベガスでマジシャンとして働く。原案が泣く子も黙るPhilip K. Dickなので未見の方は、キャストも豪華なので軽くお薦めするが、本作はたったの30秒。ソレで何が出来るのか?。私なら株取引とか、先モノに手を出して小銭を稼ぐのが関の山だが、未来を変える実験でも始めるのかと、ボンヤリ観てた。しかし、彼らは私の予想を軽く飛び越え、アプリのソフトウェアの中身に着目「何が出来るか」では無く、未来が見える謎を解く方へ突き進む。

私はサイエンティストでもエンジニアでも無い。理数系かと言えば同類だが、彼らの様にプログラムの変数を弄る事で、30秒しかない数値を伸ばす為に解析を試みる発想は、とても良く解る。理数系は目の前に有るスペックを向上させる事に躊躇が無く、プログラマーの本領発揮の展開は、見る人が観ればエキサイティングに感じるだろう。理数系の特性で不思議な事は不思議のままで終わらせず、ドラマ「ガリレオ」の様に不思議の根拠を解き明かそうとするのは、忘れていた何かを感じる。「パスワード:家」から一歩も出る事無く、スマホ1台で此処までソリッドな展開に持ち込める。うーん、実に面白い(笑)。

【ネタバレ】ミステリー鑑賞会参加者の方は、そのままお進み下さい【閲覧注意!】

結論としてラファの仕組んだドッキリで幕が下りるが、ソレがデファクトなら、ジョークにしては手が込み過ぎてる、余興にしてはウケが悪いのは誰でも分る。表面的には皆がパニックを起こしたので、嘘を付いて誤魔化した、にしか見えない。モニカのリアクションを見ても、アプリが偽物とも思えない。寧ろ彼女もグルで無いとドッキリも成立しない。此処までは誰でも辿り着けると思いますが、私の考察は違います。映像の中に重大なヒントが隠されてますが、其処に着目すれば証明できる様に巧みに脚本が練られてる。

【ヒント】原題を目を凝らして良く見て下さい。

【問題】未来予知アプリは本物か、偽物か?。その根拠も証明して下さい。

 解答編は本日午後9時以降に投稿します、貴方の名推理をお待ちしています。
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