KnightsofOdessa

シングル・ガールのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

シングル・ガール(1995年製作の映画)
5.0
[仕事を得たもう一人のロゼッタ] 100点

映画を観る上で"ときめき"というのも重要なファクターになる、なんてもっともらしいことを言って書き始めたが、要するにヴィルジニー・ルドワイヤンが可愛いのである。早朝のカフェで、一人だけ上着のボタンを閉じずにピラピラさせたまま(しかもノーブラで)ホテルで、そして抜け出して再びのカフェで、ヴァレリー=ルドワイヤンは必要以上の速度でとにかく歩き続け、只管に扉を開け続ける。何も寄せ付けないような速度で、仏頂面を顔に貼り付けて。明らかにぶかぶかな制服は、何度も肩からずり落ちて、その度に着直しているのが本当に可愛い。そんなヴァレリー自身も少女から大人の女性に向かう過渡期にあり、仕事を得て状況を打開しようとするのも、生き延びるために仏頂面を顔に貼り付けているヴァレリーが最終的に泣き出してしまうのも、終始カメラが彼女を置い続けるのも『ロゼッタ』に似ている。

しかし、最終的に理解者を得たことで完結した『ロゼッタ』とは異なり、本作品では誰にも頼ること亡く息子を育てつつ自立した生活を送る"未来"が重要なファクターとしてラストに登場する。これまで、バイト初日にセクハラを受けても、妊娠を伝えられた恋人がビビり散らしていても、主任やら同僚やらに散々"大丈夫?"と訊かれた挙げ句"片親で子供を生むのは間違い"とまで言われても、最終的にはそれぞれに適切に対処して生き延びてしまえば勝ちなのだと。そりゃそうだと思いつつ、そう出来ないのが人間なのだ。"他人に迷惑が掛からない範囲で楽しく生きる"ってのが私の信条なんで、彼女は是非とも応援したい。

でも一つだけ言わせていただくと、もっと高画質でルドワイヤンを拝みたいんだよ!幾らでも出すから、世界のルドワイヤンファンのためにもリマスターしてくれ。
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