突然伴侶を亡くした女性ファーン
(フランシス・マクドーマンド)は家を手放し、
選び取った少ないものだけを愛着のあるバンに詰め込み
ひとりアメリカの広大な土地で放浪生活をはじめる。
はじめは勝手がわからなかったものの、
同じように季節労働をしながら放浪生活をする
通称ノマドな人々と徐々に親しくなっていく。
時折人々は散り散りに去り、またどこかで出会う。
圧倒的な自由と孤独を感じつつ、現代のアメリカの
高齢で低所得者な人々の実情を浮き彫りにする作品。
登場人物のほとんどが実在のノマドで
半ドキュメンタリーな感がある。
また常に背景にある、とんでもなく美しい西部の
自然を堪能できるとともに、資本主義からあぶれた先は
零れ落ちる砂の如く掬い取られることもない。
反面、限りある時間を都会でせせこましく過ごすか
自然の偉大さを感じながら質素に暮らすかなど
存分に考えさせれる問題提起作でもある。
途中、姉から言われた言葉
「あなたはいつも勇敢で勝手に決めて出ていった。
楽しいことはいつも外にある」が決定的に
人生のスタイルを表していて、未知の世界へ行動できるか
平穏無事で単調な守りの人生かを物語る。
流れるような景色と感情を叙情的なメロディで支え、
ポエティックな仕上がりになっている。
アカデミー賞受賞最有力候補に頷ける。