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ノマドランドのtomひでのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.0
車上で移動生活する、放浪の民 (ノマド)を描いた作品。自分の意志でノマドになる人もいるだろうが、仕方なくノマドとなる者もいる。

この映画に出てくるノマドの多くは高齢者で、日本で想像するようなキャンピングカーでの自由な旅生活とはかけ離れている。劇的な何かが起こる映画ではなく、とても静かな映画。

オープニングの重い空、夕焼け、川の流れ、野生の牛、密林の大木、荒野の寒々しさ、旅の背景となる風景は広大で美しいが過剰な画づくりにはなっていない。至ってノーマル、ドキュメンタリーのような自然さ。

自殺未遂の女性、2匹のペットと目が合って思いとどまる話、別の女性のツバメの群れを見てその美しさに感動した話が印象に残る。

人が死ぬ時はひとりで、物質的な何かを持って行く事はできない。最後まで持っていられるのはパーソナルな人生の記憶。自分が高齢でひとりになった時、何かを見る為に旅に出るだろうか?憧れではなく、現実としてノマドに自分が追い込まれた時、漸くこの映画を理解するのかも…。

主演女優のトイレ排泄音を意図的に聞かせる映画なんて初めてだな。
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