Kawaguchi

ノマドランドのKawaguchiのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.6
劇中にシェイクスピアのソネットがでてきます。
「君を夏の日にたとえようか
いや、君のほうがずっと美しく、おだやかだ
荒々しい風は五月のいじらしい蕾をいじめるし、
なによりも夏はあまりにあっけなく去っていく
時に天なる瞳はあまりに暑く輝き、
かと思うとその黄金の顔はしばしば曇る
どんなに美しいものもいつかその美をはぎ取られるのが宿命、
偶然によるか、
自然の摂理によるかの違いはあっても
でも、君の永遠の夏を色あせたりはさせない、
もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ
ましてや死神に君がその影の中でさまよっているなんて自慢話をさせてたまるか、
永遠の詩の中で
君は時そのものへと熟しているのだから
ひとが息をし、目がものを見るかぎり、
この詩は生き、君にいのちを与え続ける」

すごい自信に溢れた詩ですよね。
いつかあなたを美しさは必ず衰えるだろう。でもわたしに歌われることによって、永遠に読まれ続け、その中では美しくあり続けるだろうと。

クロエ・ジャオはこれがしたかったんですよね。
ノマドランドに出てくる人々は役者ではなく、本当のノマドの人々です。みんな高齢で、あと数年経てば亡くなる方も沢山いるでしょう。しかし、この映画で描かれることによって、あなたたちは美しくあり続けるでしょうと。ノマドランドはクロエ・ジャオのソネットです。
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