映画好きの柴犬

ノマドランドの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.9
その生き方は、選んだのか、選ばされたのか

 会社の破綻で、仕事と住処を失った女性(フランシス・マクドーマンド)が、バンに家財道具を詰め込み放浪する姿を描く、社会派ドラマ。

 クロエ・ジャオ監督の前作「ザ・ライダー」と同様、一人の女性が自身の生き方に決意を固めるまでを淡々と描き出す。実際のノマドたちを起用したドキュメンタリータッチの演出と、美しくも厳しさを示すアメリカの大自然、物悲しくもメロディアスな音楽が印象的。アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演女優賞を獲得。

 本作で描かれるノマドの人たちは、自身の生き方に尊厳を持ち、自らの意思でノマドとしての生き方を選択しているように見える。一方で、季節労働者としてAmazonで配送作業をする彼らと、定住場所があってその品物を受け取る側の人たちの間には、明らかな分断がある。ノマドの人たちの生き方は、結果的には彼らに合っていたのかもしれないが、そこには社会システムには頼れないという諦めがあるように思えてならない。