「ノマド」という言葉を聞くようになったのはいつ頃だったか。
「ノマドワーカー」とかかな。なんとなくポジティブなイメージの言葉だったのだが。
「ホームレスじゃないわ。ハウスレスなの。」
私が20代や30代だったら、この映画を観て自分の親の将来に思いを巡らせたりしたかも知れないが、どちらかといえば主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)に近い(近くはないんだけど)お年頃。
会社勤めしている自分も、いつ「ノマド」になるかわからない。
いや、この日本であんな生活できるのかしら。無理だよね。
アメリカって広いな、と。物理的な意味だけでなく。
RVパークやキャンピングカーと聞くと「レジャー」をすぐに思い描くのだが、それだけじゃないんだな、と知って軽くショックを受けた。
劇中でRVパークに多数のキャンピングカーが停まっていたけど、そのほとんどがレジャーではなく、生活に直結している場なんだなと。
仕事も家も街まで失ったファーンが車上生活を続けるロードムービー。
北に南に移動しながら、その時できる仕事、季節労働に就いて生活を続けるファーン。行く先々での人々との出会いや別れとともに旅を続ける。
労働力の搾取、劣悪な労働環境の代表として取り上げられることもあるAmazonが、実はノマドの人たちのちょっとした拠り所のようになっていたりする。外から見るのと内から見るのでは違うのかしら。
「面白い!面白いなぁ」というよりは、観ている間も観終えたあともずっと考えてしまったし、今も考えている。
旅に出たきっかけはファーン自身ではないのだが、旅の途中でファーンにはいくつかの選択肢があった。そして選んだのはファーンだ。姉の存在は大きいのでは?と少し思ってしまうのは意地悪な意見か。
しかし、自分だったらどうするだろう。わからない。
少し薄暗い映像。バシッと決まった固定の引きの画と、登場人物に迫る手持ちの画と。余計な音楽も少なく、余白が多くて好きな感じ。
リアリティがすごい、と思ったら劇中のノマドの人たちは、実際のノマドの人たちだったようで。
フランシス・マクドーマンドも演技なのか、本当にノマド生活をしているのか分からなくなるぐらいだった。
お皿が割れた時は「あっ」って声が出そうになりました。