桃

ノマドランドの桃のネタバレレビュー・内容・結末

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

気になっていた話題の受賞作品、ようやく鑑賞。
主人公含めた一部登場人物以外、実際の車上生活者で構成されているというのが極めて興味深い。

舞台は2011年のアメリカ、ネバダ州。
主人公のファーンは、暮らしていた町がリーマンショックの企業倒産で失われ、夫も亡くし、職を転々としながら、ノマド(現代の遊牧民)へと流れ着く。

暮らしてきた街、国が人生に及ぼす影響力は、恩恵を受けている側にはわからないものがある。まじまじと実感させられる。

また、人の心、生活は簡単には変えられない。
ファーンはノマド暮らしでシーズン毎に異なる職で生計をたてながら、それぞれの土地でそれぞれの仲間と出逢い、一緒に時を過ごす。
お互いに似た者同士で「また会おう」と抱き合って別れることを繰り返す中で、
建物の中での暮らしを薦める人も少なからず出てくる。
しかし、それは、できない。

-ノマドの暮らしにはさよならがない
そう話すシーンもあったけれど、

ファーンはノマドを続けることで、亡き夫の生きた証を残し続けることを誓い、指輪も離すことはない。
夫の思い出が残ったキャンピングカーも値打ちがないと言われようと、買い換えることはしない。
亡くなった大事な人を偲ぶ気持ちは、他人には理解できないもの。
また、ファーンは自分の人生の歯車がうまくまわる場所がノマドの暮らしの中にあるとも実感していたのだとも思う。

作品全体として、屋外のシーンの連続で、ネバダ州の自然の美しさに惚れ惚れとした。また、冒頭にも書いた、実在のノマド達の描写も美しい。
ユーモアとチャーミングな笑顔が魅力のリンダ・メイや、石が好きで率直で面倒見の良いスワンキー、彼女と離れて暮らしながら手紙を送る少年。
静かながら、美しさを一つ一つ切り取ってパッチワークしていくような、クロエ・ジャオ監督の繊細な感受性が窺える。

デイブが息子と連弾するシーンも好き。

-ホームレスでなくハウスレス
-ノマドの暮らしってアメリカの開拓者と似てる
ある意味アメリカの伝統よ
桃