今年一番の観るべき映画の一つと言って過言ではない作品であるように思う。
個人的にこのテイストの作品は苦手ではあるが、二時間近く集中して観入ってしまう自分がそこにあったので、やはり素晴らしい作品なのだろうと感じた。
一つには、主人公を演じるフランシス・マクドーマンドの表現力は演技を超えたお芝居であり、二つ目には、彼女が行き先で出会うノマドの人たちのドラマが各々挿入されていく中で、一部は実際のノマドの人たちの出演で俳優としては素人であるのだが、マクドーマンドとの掛け合いが溶け込んで、創作という領域を完全に超えてしまっている。
クロエ・ジャオ監督は中国系の監督でありながら見事にアメリカのローカル文化を描き出しており感服してしまう。
同時に、アメリカではノマド生活も一つのアメリカ文化であるのだが、映画の主題として取り上げたことは皆無に等しいのではないだあろうか？
映画を通じてこの世界を見て非常に衝撃を受けたのだが、本作はアメリカ経済の背景から生じている側面もしっかり描き出している。
どの世界にも偏見や差別があっても、同時に人々の愛も健在であることをこの映画は描いている。
