とらねこ

ノマドランドのとらねこのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.9
「働くだけ働いて、働けなくなれば放り出される社会。でも見方を変えれば、本当の意味で失うものが何も無くなった今、自由を得ることが出来たとも言える」という台詞に絶句。

砂漠に溶け込む大自然の厳しさとドライさ。
もし自分なら、しゃかりきに前だけ見て生きていくことなんて出来るのだろうか。
主人公の貧困の実情を見ながら、いつ自分がこうなってもおかしくないという思いが押し寄せて来る。
拠り所の無い場所へ自分が放り出されたかのような恐ろしさの前に投げ出された、自分の足場の見えない底なしの無力感。
ドン底を経験して何故か感じる大自然の優しさ。

アメリカの自由は一体どんな地平線まで来たのか。
エンパイアの崩壊は資本主義の象徴?

サンフランシスコに行った時、安宿に泊った事があった。
そこで出会った日本人がいたのだけれど。立派な経歴を持つ人だったのに、病気になり働けなくなって、SFの家賃が物凄く高いために、マンションから出なくてはならなくなったそうだ。アメリカの大都会だとこうした事はザラにあるそうだ。
実際にそうした経験をした人と一度でも会話してみたら分かるかな。
ドラマティックに描くために貧困を取り上げているだけ、なんて思う人も居るようだけれど、そんな綺麗事だけで生きていける場所ではないなと実感しますよ。アメリカって本当に怖い場所ですわ。
日本も貧富の差が激しくなって、おそらくは笑って見られない時代が来ると思うけど…。
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