2021年アカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞受賞作品。様々な理由で、日雇いの仕事をしながら、キャンピングカーで車上生活を行う高齢者たちの実態を描いたロードムービー、半ドキュメンタリー作品。
原作がノンフィクションであり、出演している演者も2人を除いて、実際の車上生活者ということから、ほぼドキュメンタリー作品のような雰囲気。淡々と、そこにある生活をリアルに描かれており、雄大で美しい自然と相まって、美しい作品でした。
静かな語り口の中で「自由」「喪失感」といった哲学的な問いかけがなされるので、複雑な想いを抱く作品だと思います。ですが、そんな広い感想を持てることが、作中のノマドの人たちよろしく、とても懐の深い作品です。主人公ファーンが、孤独と喪失感を抱えつつも、なぜこの生活を選択しているのか、言葉ではなく作品を通して伝わってきました。
バリバリに働ける年齢層ではなく、60歳以上の年齢だからこそ求める、あらゆる束縛からの解放というものに気づかせてくれる作品でした。そういう意味では、まだこの作品の真髄にはまだ辿り着けていないのかもしれないですが、それでも主演のフランシス・マクドーマンドの自然な演技力で、見ている側にも寄り添ってくれるので、世界観にいつの間にか入り込むことができるという、素晴らしい作品です。
言葉ではなくシーンで語るタイプの作品のため、集中力は要りますが、ノマドの人たちの生き方は自分で決めるという、誇り高さが語られた美しい物語でした。