ーcoyolyー

ノマドランドのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.4
自分は「ホームレス」じゃなくて「ハウスレス」だと主張するじゃないですか。もうこの時点で私は阻害されてしまった。主人公の論理だと私は物心ついた時からずっと「ホームレス」なんですよね。

これなんだかんだやってるけど結局は普通の人の話。『82年生まれ、キム・ジヨン』もそうなんだけど普通の人がちょっとレールを外れて困って途方に暮れている感じの話。だから普通の人が他人事に思えなくて身につまされるんだろうなとは思うんだけど、もうハナから埒外にいる人間はこの世界には存在していない。なので終始居場所がないし息苦しかった。これを他人事と思えない人は普通の人で他人事としか思えない私は普通ではない人。この線引きは厳然としていて、向こうで困っている人を見ている私は笑うしかない。そちら側にいる人は悲しみの底で泣き濡れることができる人。こちら側の私たちは向こうでそこがどん底でこれ以上落ちる場所がないと信じきっている人たちと違ってその底が抜けることを知っている人。しかも何回も。遥か上方で泣き濡れている人たちの涙のおこぼれを舐めて乾いた喉を潤しありがたいね、と手を合わせちゃう感じ。もう流す血も涙も干からびてしまってそうなると笑うしかない、という態度を身につけてしまった人たち。

この映画、基本的にアメリカ国籍の白人しか出てこないんですよね。それが「普通」だから。カラードは遥か後景にしか存在しない。監督が中国系の女性なのに。



私の従妹に日系アメリカ人女性がいます。血統は純日本人、出生地がNY、第一言語が英語、日本は祖父母や親戚がいる祖国だけど母国はあくまでもアメリカ。母のことをTiger momと称する弟共々アイビーリーガー。(私から見た)叔母が日本人補習校で教えているのもあって日本語も問題ない。そういう人物。

そんな彼女と(日本語で)話しているとアメリカでアジアン女性として生きることが「普通」ではないことも少しはわかります。日系と中国系の違いはあれ、クロエ・ジャオ監督も彼女と似たような体験は重ねているのだと思う。そういう人がアメリカの白人ばかりで成り立つ世界を撮る。切り取る。自分の経験が滲み出ると「普通」からはみ出してしまうから丁寧に切り取る。白人はこっち、自分はあっち。自分を悉く排除する。

クロエ・ジャオにこうさせてしまう闇をね、皆もっと考えたほうがいいんじゃないかなってそう思いました。

あ、一箇所だけ私が親近感を覚えた場所があったよ。主人公が編み物してる時かぎ針使ってたんだ。私もやっぱりかぎ針好きだなって慣れない棒針で悪戦苦闘しながら観てたからちょっと嬉しくなった。
でも私努力家ですからね、慣れない棒針でガタガタになったものを解いて編み直しているうちにちょっとだけ棒針と仲良くなってきたよ。両方使えるに越したことないからね。もう少し棒針と仲良くなれるように頑張るからかぎ針さん今しばらくお待ちくださいね。
ーcoyolyー

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