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ノマドランドのspicaのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5
ずっと見たかった。公開されてしばらくしてから原作を読んだのだが、とても考えさせられた。
アメリカの大地のスケールの大きさと、実際の高齢者たち(ほとんどが本人だということを頭に入れて見たかった)の車上生活をしっかり目で見ることができ、なお一層考えさせられた。
頑張って生きてきたのだから、老後は安泰な生活をと思ってきたじゃないか。多分彼ら自身、ノマドを狙っていたわけではない。自由を求めて、自ら選んで車上生活を送っている人はやはり少ない(原作を読んでそう思った。当たり前じゃないか)。仕方なしにそうなった生活をいかに暮らすかとなった時に、仲間たちと助け合い、共に楽しみ、また季節ごとに移動して働き、再会を喜び…となったのだろう。
全くの人ごととして見られたのなら違う感想になったと思うが、寂しさや悲しさでやりきれなくなった。ものすごく暗い気持ちになり、今日がお天気のいい日でよかったと思った。同情なんかされたくないだろうし、しないけれど、讃えたり憧れたりも全くできない。
主人公が暖かな家での定住を選ばなかったのもわかる。映画にならないし、そもそも彼女は強い。ノマドになれずにいた人もきっといたはず。その人たちをアメリカは支えられているのだろうか。
家族や他人のしがらみに縛られるよりは孤独と自由を選ぶ、という単純な話ではない。暖かい家と家族、お金があって、誰が彼女たちのような生活を選ぶというのか。若者ならともかく。ずっと生きてきた普通の老人たちが雨露しのげる家で穏やかに暮らせる社会であってほしい。

この映画をAmazonプライムで見るというのも、なんか皮肉だ。この便利さ、快適さは誰が支えているのかという話だ。
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