強烈だった。
いかに孤独を克服するか。
高齢でいかに貧困に立ち向かうか。
ノマド達が好きでこの生活をしてるように勘違いしてこの映画を観た人もいるようだけど、これはアメリカという国が抱える実際の社会問題。
年金を貰う年齢になっても生活できる額は貰えない。家がなくて、しかも配偶者も失い、一人でトレーラーハウスで暮らすのは見ていてとても苦しかった。
地に足が付かないノマド生活、主人公の女性の疲れたような表情、化粧っ気のない顔や乱れたショートヘアが余計に気を重くさせる。色んなところに行って短期アルバイトをするその日暮らし。
季節が良い時は気分よく過ごせるかもしれないけど、厳しい寒さの時期、一人で狭い車の中で眠りにつく時に感じる孤独は、想像する私には耐え難い。雄大な自然は美しいが、そう思えるかどうかは自分の置かれた境遇やメンタルに大きく左右されるだろう。
若ければそんな生き方も楽しめるかもしれない。体力や気力がなくなってくる高齢者は、狭くてもなんでもいいから家の中で暮らしたいだろうし、バケツをトイレにする生活はしんどいし、体調悪くなっても不安で怖い。でも、ノマドの多くは高齢者だそうだ。登場人物の一人ボブ・ウェルズはそういった彼らの助けになろうと実際に活動している人。
一期一会の人達は多彩で、ピアノでブルース弾き語りのおじいちゃんはめっちゃイケてた。登場人物は俳優ではなく本物のノマドたち。リーマンショックの煽りを受けて家や財産を失った人々がトレーラーハウスでの生活を余儀なくされ、それが今高齢化している。
日本ではちょっと考えられないアメリカの闇を見た。
主演のフランシス・マクドーマンドがジョエル・コーエンの妻だったのがびっくり！
