けーはち

ノマドランドのけーはちのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.7
冒頭クリスマス商戦にAmazonの倉庫で働く車上生活者らが描かれる。「ワーキャンパー」と呼ばれる現代のノマドは今やAmazonには不可欠な人手。特に寿命が長く低い年金では生きられない女性の高齢低賃金労働者が増えた。本作は60代女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)を主役に、過酷ながら自由な日々を淡々と半ばドキュメンタリーのように描く。彼女の人生には紆余曲折あり価値観も複雑。ノマドを脱する機会はあるのに彼女はそうせず孤高を貫く。本作は安易にノマドへの同情を誘い社会批判する訳でも、逆に自由な生き方として持て囃す訳でもない。ボブ・ウェルズという仙人みたいなオピニオンリーダーが出てきたあたり新興宗教臭いヒッピーみたいだなぁ〜と思ったが、考えてみれば、これぞカウンターカルチャーを経験したアメリカの「団塊の世代」の現在の姿として正統で、ある意味ノマドという新たな人生の形を開拓しているのかも。畢竟人生とは旅であり人間とは孤独。雄大で寂寞とした自然を背景にそう考えさせられる。