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ノマドランドのこーたのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0
ノマド民にはいろんな人がいるんだなあ。一見変人だとか、ホームレスとかそんな印象をどこかで持っていたけれど、好きでやっている人って実はそんなに居ないんじゃないかと。旅行のように外部への好奇心や刺激を求めて…といった類いではなく、社会や環境、自身の問題で歳を重ねた故の生きづらさとか、基本的にはネガティブな事情と感情がノマド民を掻き立てている。

作中では主人公が様々なノマド民と出会い、またねと言って別れる。さよならではなく、ロードでまた会おうマインドで繋がっている。
車中泊で怒られたり、広大で豊かな自然公園でキャンプしたり、時には若者の恋愛相談に乗ったり、ロマンスもあったりと、色んな出来事から主人公がなぜノマドを続けるのかが考察できる。
彼女自身は心優しい人間ではあるものの、あまりフレンドリーな性格ではない。そういった特性と亡き夫への喪失感、心配してくる親戚。それらが彼女に生きづらさを覚えさせ、放浪に至ったように思われる。定住の誘いは数回あったが腰を落ち着けるには至らず、誰かに用意された居場所は彼女に窒息するような居心地の悪さを与える。ここは私の人生ではない、私の居場所ではない。それでもきっといつかは腰を落ち着かせる時がくるのだろう。ノマド民は孤独に見えて、同時に繋がりに飢えてもいる。人間は一人でも生きられるが、幸福には生きられない。主人公のような人は幸せになってほしいなあ。
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