しゃけ造

ノマドランドのしゃけ造のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
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パーフェクトデイズを見たばかりで、通ずるところがあるように思えた。両作品とも、独特な生き方をする主人公の孤独に寄り添った作品だが、決定的に違うのは、こちらの作品の主人公であるファーンが、人間として弱いということである。というよりむしろ、平山が殆ど異常者と言ってもいいほど強すぎるのだが。ファーンはもちろん、そのたびの中で出会う人々は、一見自由で、束縛から開放された生活を送りながらも、心の中にどこかしらのしこりを抱え、そのしこりから逃れるために、同類たちでより集まり、まさに馬車馬同士で助け合う。しかし、そうした生活は孤独を埋めるための麻薬に過ぎず、自分の人生や幸福に対する疑問から逃れることはできず、悶々と生きている。この作品のそこに流れる重さ、辛気臭さはそのあたりに由来するのだろう。同じ初老の人間が、ミニマルな特殊生活を送っているという点ではパーフェクトデイズと同じだが、ファーンに対しては決して「こんな風に生きていけたら」などとは思えないだろう。一概に両作品を比較することはできないが、パーフェクトデイズが自由な人間の幸福を描く一方、ノマドランドはこうした生活の暗部、孤独の辛さや人間の弱さを描いた作品と言えるだろう。というよりむしろ、ほとんどの人は平山のようには強くなれない。人間のリアルを描いた作品だとも言える。
総評。幸せとはなにか、良い生き方とは何かを考えさせられる作品だった。しかし、この監督に次作でヒーロー物を作らせたのは、ほんとに謎である。