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不思議なヤギのkuuのレビュー・感想・評価

不思議なヤギ(2018年製作の映画)
3.5
『不思議なヤギ』
原題 Magic Alps.
製作年2018年。上映時間15分。
実話に基づく物語だそうです。
Italian Short movies.伊太利亜短編映画。 

アフガニスタンからヤギとともにイタリアにたどり着いた難民。
現地入国管理官は動物の対応に困らされる。

昨夜(2/7)、BS松竹東急でブラピの『ワールドウォーZ』がやってたし何度目かの視聴を終えた。
その後に今作品『Magic Alps』が放送されていました。
何気なしにサクッと視聴。

『人は悲劇から逃れられるのか、誰がそれを決めるのか。』

今作品は実話に基づいてるそうで、数年前に映画製作者がミラノ中央駅で北欧に向かう途中で集まってきた難民の何人かにこの話を聞いたんやそうです。
ヤギと一緒に旅をすることにこだわる羊飼いのアイデアは、難民危機の完璧なメタファーであり、映画で伝えなければならなかったんやろと製作陣は思ったんやろなぁ。
その、真摯さは伝わった。
サイードとヤギ🐐が登場する前に、移民センターの廊下に人々群がっているのが映る。
イタリアのコメディアン、ジョバンニ・ストルティはイタリアの入国審査官を演じている。
彼は、この後、羊飼いとヤギのこの問題と云うか事件を解決しなければならない。
映画製作者たちは、この問題に関する実話の『逆説的』な性質、つまり個人の存在全体を完全に変えてしまう力を持つ、覆い隠されたシステムに興味を持ってるのがわかる。
ヤギにイエスかノーかを云わせる難しさと同じように、人間としての我々のあり方を反映してると云える。
せやから、ここで提起されるんは、

運命を決める権利は誰にあるんか?

はたまた、誰が悲劇から逃れられ、誰が逃れられないかを決め権利は誰にあるんか?

誰が自由を求めることができ、誰が出来ひんのか?

権利があるのは誰なんか?

ちゅうことやと思う。
官僚制度ちゅう巨大で盲目的で非人間的な機械に対抗する人間を描いている。
移民が現在進行形で非常に複雑な現象であり、マスメディアではしばしば粗雑で表面的な方法で語られてる。
日本においては、ほぼ語られることはない。
だからこそ、今作品のアフガニスタンの羊飼いのように、逆説的な出来事が起こる人々の隠された人生をスクリーンに映し出す必要と有益性は大いにある。
サイードはヤギを連れてイタリアにやってきたが、彼の物語はヨーロッパ共通の亡命制度の矛盾の多くを浮き彫りにしている。
短編映画てのは、右翼ポピュリズムの台頭の根底にあるんがしばしば見受けられる。
今作品は論争の的となる国際移民と国境を越えた政治に関するこの問題を、通俗やレトリックに陥ることなく正確に扱ってた。
移民の問題がデリケートな問題であるのは多くの人が知ってる。
今作品は、そんなデリケートなとこに登場人物のユニークな体験をできるだけうまく伝えることがでていた。
また、決して暴露映画や論争の的となるような映画にはなってなかったのは、良かったかな。
最も混沌としていて難しい瞬間でも、我々を極めて冷静に働かせることができるはず。
今作品のようなのは日本で生活していたら、中々、目に耳に入りにくい題材やし、通常は観客がアクセスできない視点を提供してる物語故に興味深く観れ、短編とは云っても考えさせられました。
ゾンビ映画の興奮した気持ちに、程好いウォームダウンさせる作品でした。
BS松竹東急やるやん。
善きチョイス。
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