真一

ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償の真一のレビュー・感想・評価

3.9
 人種差別の非道さと卑劣さを暴き出した良作です。再掲。

 舞台は1960年代の米シカゴ🇺🇸。運悪くFBI🔫捜査官ロイ👤の手先にさせられた貧困層出身の黒人青年ビル👨が、黒人解放運動組織ブラックパンサー党👊に潜り込み、スパイ工作🔭を繰り広げる。だが、次第に黒人リーダーのフロイド🧔に感化されるビル。FBI🔫と組織👊の板挟みになったビルが下した運命の決断とはー。スリリングな展開が魅力の作品🎬️です。

※以下、ネタバレあり。

 FBI🔫の狙いは、犯罪撲滅でもなんでもなく、人種差別に反対するブラックパンサー党👊の殲滅にあった。 FBI🔫自体が、正体を隠したレイシスト組織👿だったのだ。本作品の肝は、ここにあります。
 
 FBI捜査官ロイ🔫が、ビル👨を手なずけるために持ち出した大義名分もおぞましい。ロイ👤はビル👨に「パンサー党は暴力集団だ。暴力は放置できないだろう?」と切り出す。ブラックパンサー党👊を暴力路線⚔️に走らせたのは、丸腰の黒人を虫けらのように殺しまくった自分たちFBI🔫だという現実に気づこうともしないロイ👤。そんなロイ👤の下で、罪の意識に苛まれながらスパイ工作🔭を続けるビル👨の姿が、哀しい。
 
 一見すると、ヘイトクライムは日本🇯🇵と無縁のようにも見えるが、そうではない。百年前の関東大震災時、無実の朝鮮人🇰🇷🇰🇵が多数虐殺されたのは、この日本🇯🇵だった。「朝鮮人が井戸に毒をいれた」というデマに飛び付いた私たちの祖先が、残忍な殺戮を繰り広げた歴史に照らせば、米国🇺🇸での人種差別が他人事でないことが分かります。

 現在も、日米はレイシズムを克服できずにいる。米国🇺🇸では警官👮‍♂️による黒人殺しが相次ぎ、日本🇯🇵では在日コリアンが住む地区が放火🔥された。中国🇨🇳では、チベット族とウイグル族への差別、迫害が伝えられる。そしてミャンマー🇲🇲では、少数民族が虐殺されている。レイシズムは、最も深刻で醜悪な地球規模課題であり続けている。
 
 ビル👨を演じたラキース・スタンフィールドの繊細な演技に、引き込まれた。フロイド🧔を演じたダニエル・カルーヤの存在感もバッチリで、ハラハラドキドキ感に満ちていた。

 ビル👨は良心の人だった。良心があるから葛藤し、苦しんだ。FBI🔫に強いられた裏切り行為を、神も仏も責めはしないだろう。心に刺さる一本でした。
真一

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