おざわさん

ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償のおざわさんのレビュー・感想・評価

3.8
下らない窃盗で捕まってFBIに情報を流すことを条件に泳がされ、危険視されていたブラックパンサー党のイリノイ支部に潜入したオニール。

そもそも生きるのに必死で黒人解放運動なんてまったく興味もなかった彼が、そこで絶対的なリーダーシップを持つ議長のフレッドに気に入られて警備担当となる。

でもFBIから聞く暴力的な姿とは別人の様に、民主的で暴力に頼らず言論と数の論理で社会を変えようとしていたフレッドに、戸惑うオニール。

オニールを潜入させて連絡を取っていたFBI捜査官も、始めはそんなつもりはなかった様に見えましたが、次第に上司たちの理不尽な捜査に巻き込まれていく。

キング牧師やマルコムX亡き後の黒人社会で、その絶大なカリスマ性でフレッドが「ブラック・メシア」になってしまうのでは?という恐れを排除しようと、やがてFBI長官はオニールを「ユダ」に仕立て上げていく…

半世紀前に起こった事件の真実をあからさまに描いた映像に映るのは、信じられない様なでっち上げや真実を捻じ曲げた、ことの真相を暴いていきます。

やはりアメリカは秘密を保護する期間が決められているから、いつかは真実が表に出ることを覚悟していなければならないってことがよく分かるストーリーです。


しかしそれにしても仲間たちを守るためならと、5年くらい刑務所に収監されることも厭わなかったフレッドと、なんの信念もない窃盗の6年の刑期を嫌がったオニールの差がこんな結果をもたらすとはね。